チューニング

精選版 日本国語大辞典 「チューニング」の意味・読み・例文・類語

チューニング

〘名〙 (tuning)
ラジオテレビ受信機受像機の電波を同調させること。
② 楽器を調律すること。また、合奏前に楽器の音合わせをすること。
自動車など機械類を調整すること。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「チューニング」の意味・読み・例文・類語

チューニング(tuning)

[名](スル)
ラジオやテレビをある周波数に同調させること。
楽器を調律すること。また、合奏前に楽器の音合わせをすること。
機械などを調整すること。チューン

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

大学事典 「チューニング」の解説

チューニング

[学修成果に基づく大学教育の方法論]

チューニングとは,大学における学問分野の教育を通して,学生にどのような知識や能力を身につけさせたいのか(学修成果)について,大学間および大学・ステークホルダー間で緩やかな共通理解を形成するとともに,各大学がその共通理解に基づいて学位プログラムを設計・実施・改善するための方法論であり,大きく次の三つの特徴がある。

 第1の特徴は,大学システムおよび学問分野としての「共通性」と,個別の大学の「多様性」「自律性」を両立させる工夫として,学修成果を抽象性のレベルが異なる「コンピテンス」と「学習成果」に区別して捉える点である。チューニングにおけるコンピテンスとは,学位プログラムを履修した総合的な成果として学生が修得することが期待されている知識・能力を指す。学位プログラムを構成する各科目の履修を通して学生が習得する具体的な知識・能力が有機的に結合したものであり,各科目の個別の文脈を超えて教員間で共有可能であるためには,一定の抽象性をもって記述されている必要がある。それに対して,チューニングにおける学習成果とは,学生が個々の科目の履修を通して習得することが期待されている具体的な知識・能力である。学習成果は,科目を担当する大学教員が,学位プログラム全体で追求するコンピテンスと当該科目に割り当てられた時間数を勘案しながら,科目の教育内容に照らして自律的に決定するものであり,単位認定の根拠として,科目の履修期間内に達成可能であり,測定可能でなければならない。

 抽象的なコンピテンスに関する合意に基づいて学位プログラムを設計する一方で,学位プログラムを構成する各科目の学習成果の設定は大学教員の自律的判断に委ねること,学習成果の習得をもって単位認定の根拠とし,単位の累積をもってコンピテンスは修得されたとみなすこと,こうした方法をとることで,大学教育の「共通性」と「多様性」「自律性」の両立が図られている。

 チューニングの第2の特徴は,学問分野の学修成果に関する専門的合意としての「学問分野別参照基準Subject Areas Reference Points」を,すべての学生に修得させなければならない最低基準としてではなく,多様な学位プログラムを通して学生に修得させようとする学修成果の簡潔かつ網羅的な一覧として作成している点である。大学進学人口の拡大に伴う大学の多様化が進行する中で,大学教育の質を保証することは喫緊の課題と言える。チューニングでは,各大学がその特徴を分かりやすく説明するための共通の枠組み構築することで,大学教育の透明性を高め,質向上を図っていくことが目指されている。大学はそのミッション,学生のニーズ,労働市場のニーズ,大学教員をはじめとする教育資源の制約等を勘案しながら,参照基準に示されたコンピテンスの一覧の中から,自ら追求するコンピテンスの組合せを選択し,学位プロフィールを定義する。そして,この学位プロフィールに基づいて学位プログラムを設計・実践・評価することで,大学教育の「共通性」と「多様性」「自律性」を両立させている。

 チューニングの第3の特徴は,学問分野別参照基準が大学教員によって,学生の進路先の雇用主や卒業生等のステークホルダーとの協議に基づいて作成されており,そのことによって,社会が学生に大学教育を通して修得することを期待している,いわゆる「汎用的コンピテンス」が相対的に重視されている点である。ただし,批判的思考力,問題解決力,コミュニケーション能力等といった汎用的コンピテンスは,あくまでも学問分野の文脈の中で修得されるという前提が堅持されており,その具体的内容も学問分野の言葉を使って記述されている。

[背景]

欧州では,大陸を分断した第2次世界大戦への反省に基づき,1980年代以降,単一欧州議定書(市場統合)シェンゲン協定(国境検査の撤廃),単一通貨(ユーロ)導入による欧州統合が目指されてきた。高等教育の領域でも「欧州地域の高等教育に関する資格の相互承認協定」(リスボン協定)が1997年に締結され,3段階の学位システムと欧州レベルの単位の互換・累積制度の導入による「欧州高等教育圏」の確立を目指すボローニャ・プロセスが1999年より推進されてきた。チューニングは,こうした政府主導の共通化の動きに対して,大学が自らの「多様性」と「自律性」を保持する目的で,欧州委員会の支援を受けて2000年より展開してきた教育改革の動きである。その際,学生ニーズの多様化,大学教育の社会的レリバンスの向上,国際競争力の強化といった欧州高等教育の今日的課題に対応することも目指されてきた。

[展開]

チューニングでは,欧州で最初に手掛けられた9分野(経営,化学,地学,教育,欧州学,歴史,数学,看護学,物理学)筆頭に,42の学問分野で参照基準(チューニング)が公表され,賛同する大学で利用されている。ただし,チューニングは世界共通の学問分野別参照基準の策定を目指すものではなく,学生の移動等に伴って「共通性」を確保する必要性が認められる範囲で推進することが想定されている。その方法論は南米アメリカ合衆国カナダオーストラリア,ロシア,グルジア,中央アジア,アフリカ,タイ,中国に普及し,経済協力開発機構による高等教育における学習成果調査(OECD-AHELO)でも採用された。

 近年の新しい展開としては,抽象的なコンピテンスを具体的な学習成果に落とし込む取組みが,大学教員の共同作業として進められている。欧州では国際チューニング・アカデミーによるCALOHEE(Measuring and Comparing Learning Outcomes in Higher Education in Europe)プロジェクトが2016年に欧州連合(ERASMUS+)事業に採択され,歴史学,教育学,物理学,土木工学,看護学の5分野でテスト問題開発が手掛けられている。日本のチューニング情報拠点である国立教育政策研究所でも,2014年より機械工学分野におけるテスト問題バンクの構築に取り組んできた。アメリカでも,学会事業としてチューニングに取り組んでいる全米歴史学会によって,歴史学科目のシラバスや課題を作成する試みが展開されている。
著者: 深堀聰子

参考文献: Tuning Educational Structures in Europe:http://www. unideusto. org/tuningeu/

参考文献: International Tuning Academy:http://tuningacademy. org/

参考文献: American Historical Association Tuning the History Discipline in the United States:https://www. historians. org/teaching-and-learning/tuning

参考文献: 国立教育政策研究所チューニング情報拠点:http://www. nier. go. jp/tuning/

参考文献: ゴンサレス,J. ・ワーヘナール,R. 編著,深堀聰子・竹中亨訳『欧州教育制度のチューニング―ボローニャ・プロセスへの大学の貢献』明石書店,2012.

出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報

ASCII.jpデジタル用語辞典 「チューニング」の解説

チューニング

「tune」は「調和」の意味で、コンピューター用語としては、プログラムやシステム設定などを改良し、必要メモリー量や実行速度を改善することをいう。

出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android