イギリスの物理学者。アイルランドのカーロー州リーランブリッジに生まれ、マンチェスターの鉄道会社に勤めた。1847年新設のクイーンウッド大学で数学を教えた。翌1848年ドイツのマールブルク大学に入学、物理学・化学などを学び、1850年卒業し、1年間べルリン大学に学んだ。その後帰国して、1853年にはファラデーの後を継いで王立研究所自然科学教授となり、1887年までその地位にあった。「チンダル現象」とよばれる、微粒子による散乱光の研究で知られるほか、音波の透過に及ぼす大気密度の影響など、音響学に関する研究がある。熱現象については分子運動論的解釈の立場をとり、J・R・マイヤーの論文を英訳、紹介するなどした。ファラデーの伝記を書き、また王立研究所での通俗講演は名講義として評判をよぶなど、科学啓蒙(けいもう)に貢献した。著名な登山家でもあり、著書『アルプス紀行』『アルプスの氷河』などもある。
[藤村 淳]
アイルランド生まれのイギリスの物理学者.独学で科学を学ぶ.製図工,土木技師として働いた後に,1847年イングランドHampshireのQueenwood Collegeの数学・製図講師となり,同僚であったE. Frankland(フランクランド)と知り合う.Franklandとともに1848年渡独し,マールブルク大学で物理学を学び,1851年博士号を取得.1852年M. Faraday(ファラデー)の後押しでロイヤル・ソサエティ会員に選出される.1854年ロイヤル・インスティチューション教授となり,Faradayの後任として1867~1885年同所の所長を務めた.微粒子による光の散乱,とくにコロイド溶液のチンダル現象(微粒子による光の散乱現象)の発見で著名であるが,結晶の反磁性,氷河の研究でも知られる.T.H. Huxleyらとともに科学知識の普及に尽力した.“アルプス紀行”の著者でもある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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