宗教裁判(読み)しゅうきょうさいばん(英語表記)inquisitio; inquisition

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

宗教裁判
しゅうきょうさいばん
inquisitio; inquisition

正しくは異端尋問。単に訴えを裁くだけでなく,検察の手続であった古代ローマ法の inquisitioにのっとって,異端絶滅のため司教の通常の法廷とは別に,10世紀頃から常置された西方キリスト教会の裁判制度。教会と国家の癒着が進むにつれて異端者は同時に国家の敵とみなされ,判決を受けたものは国家の手によって最高死刑の実刑を科せられた。初めは各地の司教にまかされていたが,12世紀以来カタリ,ワルドー派などが盛んになるにつれ制度が整備され,グレゴリオ9世のとき教皇直属となり,ドミニコ会,フランシスコ会の修道士が審問官に選ばれた。裁判にあたっては密告,拷問,非公開,自白の採用などの方法がとられ,無罪が証明されるまでは容疑者に不利であったばかりか,異端者を出した領主なども罷免されたので,裁判は残酷,悲惨になりがちで教会の大汚点の一つとなった。特に 15世紀末に設置されたスペインの異端審問裁判所は国家権力と密接に協力し,ユダヤ教やイスラムからの表面的改宗者摘発やプロテスタントなどの排除のため過酷な手段をもって活動した。大審問官トマス・ド・トルケマーダは有名で,2000人以上を死刑台に送ったとされる。フランス大革命後国家との結びつきが弱体化するにつれ実刑はなくなったが,制度そのものは 1960年代にまで残存した。

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大辞林 第三版の解説

しゅうきょうさいばん【宗教裁判】

中世のヨーロッパで、ローマカトリック教会によって異端者を処罰するために行われた裁判。異端審問。

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精選版 日本国語大辞典の解説

しゅうきょう‐さいばん シュウケウ‥【宗教裁判】

〘名〙 ローマ‐カトリック教で、異端者すなわち教理に相反することを説く者を処罰するため、教会内に設けられた特別な裁判制度をいい、一三世紀に確立した。密告による摘発が普通に行なわれ、拷問を行なうのが常で、後には反宗教改革の手段としても使われた。異端審問。
※智慧袋(1898)〈森鴎外〉問「かかる人の敵手(あひて)となりて談ずるは、古の西班牙の宗教裁判(シュウケウサイバン)(Inquisition)に逢ふに殊ならず」

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世界大百科事典内の宗教裁判の言及

【異端審問】より

異端の摘発処罰のためキリスト教会に設けられた裁判制度。宗教裁判ともいう。キリスト教会が異端にたいしてとった制度的対応はさまざまであるが,とりわけカトリック教会におけるそれが,歴史的には問題となる。…

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