テイク・オフとは,飛行機が滑走路でしだいに速度を速めながら前進するうちに,ある速度にまで達すると離陸して上昇を続けるように,伝統的な社会もその変化のモメンタムがある水準に達すると急速に近代化を始めることをあらわすためにアメリカの経済学者ロストーW.W.Rostow(1916-2003)が用いた言葉である。〈離陸〉と訳される。
ロストーの主著《経済成長の諸段階,非共産主義者宣言》(1960)は経済成長を五つの段階に分けた。すなわち,〈伝統的社会〉〈テイク・オフのための先行条件〉〈テイク・オフ〉〈成熟への前進〉〈高度大衆消費時代〉である。まず制約された生産技術のもとで生産が行われる伝統的社会から第2の先行条件期へ移行するにつれて進んだ技術が出現しはじめ,テイク・オフのための制度的・思想的枠組みが準備される。
20年ないし30年間のテイク・オフ期そのものにおいては,貯蓄率は従来の2倍以上になり,国民所得の10%以上が資本形成に回されるようになる。また,高度成長を遂げる主導的産業があらわれるとともに,近代的政治・社会・経済制度の枠組みが出現して,安定した成長を常時期待できるようになる。ロストーによれば,その時期は,たとえばイギリスでは1783-1802年,フランスでは1830-60年,アメリカでは1843-60年,日本では1878-1900年である。テイク・オフ期以後,経済は成熟への道を歩む。ここでは主導的産業が次から次へとあらわれ,やがて成長経済が全分野に及ぶ。最後の高度大衆消費時代には,大衆の消費の対象は従来の必需品から離れて耐久消費財やサービスへと向かう。
テイク・オフ論は,政治・社会・経済の枠組みが形成されるのがいつかがはっきりしないとか,短期間に貯蓄率が2倍以上になったという事実はないといった批判を受け,近年アメリカではあまり用いられなくなった。しかし,テイク・オフの構想自体の魅力はいまだに捨てがたいものがある。
→経済発展
執筆者:安場 保吉
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経済発展の一つの段階を表す概念。離陸ともいう。W・W・ロストウがその経済発展段階説のなかで初めて用いたことばである。彼によれば、すべての国の経済発展は、〔1〕伝統社会、〔2〕過渡期、〔3〕テイク・オフ、〔4〕成熟期、〔5〕高度大衆消費時代、という五つの成長段階をたどるものとされる。このうちテイク・オフとは、ちょうど飛行機が離陸するときのように、経済が高い率で本格的な成長・発展の段階に突入する時期で、その要件としては、投資比率が10%を超えること、少なくとも一つ以上の主導産業が高い成長を達成すること、離陸のための制度的条件が満たされること、などがあげられている。ロストウによれば、日本のテイク・オフ期は明治10年代以降の1878~1900年ごろであったとされている。
[羽鳥 茂]
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… 持続的経済成長の開始という意味での工業化論をもっともよく理論化したのはW.W.ロストーである。彼によれば,伝統的・静態的な農業社会のなかで,農業改良(〈農業革命〉)や商業資本の蓄積など〈先行条件〉が整備されてくると,やがて決定的な転換点である〈離陸(テイク・オフtake‐off)〉を迎える。〈離陸〉をもたらす最大の要因は生産的投資率が10ないし12%を超えることである。…
…原始共同体から奴隷制,封建制,資本制をへて社会主義に至る社会構成体の推移のなかに世界史の法則性を見いだそうとするものであった。 近年,ロストーWalt Whitman Rostow(1916‐ )は《経済成長の諸段階》(1960)で,生産力発展と工業化を軸に,伝統社会から離陸(テイク・オフ)によって高度大衆消費社会に及ぶ5段階を数えたが,アメリカ型大量消費を究極におく戦略的性格が濃く,離陸の指標などの数量的把握に特徴がある。 このような単線型の段階論を批判して,ガーシェンクロンAlexander Gerschenkron(1904‐78)は19世紀ヨーロッパ工業史の分析から,先進国と後進国が同時に存在する場合,後進国は前者とは異なった発展をたどらざるをえないことを明らかにした。…
… 持続的経済成長の開始という意味での工業化論をもっともよく理論化したのはW.W.ロストーである。彼によれば,伝統的・静態的な農業社会のなかで,農業改良(〈農業革命〉)や商業資本の蓄積など〈先行条件〉が整備されてくると,やがて決定的な転換点である〈離陸(テイク・オフtake‐off)〉を迎える。〈離陸〉をもたらす最大の要因は生産的投資率が10ないし12%を超えることである。…
※「テイクオフ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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