ドイツの社会学者。テンニースとも表記される。イエナ、ライプツィヒ、ボン、ベルリン、チュービンゲンなどの大学で歴史学、哲学を学んだ。その後、社会哲学、社会学に関心を移し、ドイツにおける社会学の創始者の位置を占めるが、当時は社会学がアカデミズムでは認められていなかったため、長くキール大学私講師の不遇な地位にあった。第一次世界大戦後に社会学が公認の科学となるに至って、ようやく1917年にキール大学教授に就任し、社会学を担当し、ドイツ社会学会の会長にも就任した。
古代哲学の研究から出発したが、やがて国家哲学に関心を移し、ホッブズを中心とする近代自然法学者たちの合理主義的な社会契約説と、ギールケやイェーリングなどのドイツ歴史主義の社会有機体説との対立に注目し、メーンの「身分から契約へ」のことばに、この両者の対立を克服するヒントを与えられた。さらにマルクス、コント、スペンサーなどの影響のもとに、社会を実在的・有機的なゲマインシャフトと、観念的・機械的なゲゼルシャフトの2類型に概念化した。さらにショーペンハウアーとニーチェの影響のもとに、この両類型をそれぞれ実在的・自然的な本質意志と、観念的・人為的な選択意志との表現で理論化した。そして、ゲマインシャフトとゲゼルシャフトの両概念を、現実を分析するための類型概念としながらも、また歴史の発展を示すものとして「ゲマインシャフトからゲゼルシャフトへ」の発展図式を示した。
この両概念の提示によって、社会学史上に不滅の功績を残すとともに、晩年は人口統計や世論、さらには社会問題などの実証的研究に従事するとともに、社会学の理論的体系化にも努め、ドイツ社会学の発展に大きく寄与した。主著には『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』(1887)、『世論の研究』(1922)、『社会学的研究および批判』(1924)などがある。
[居安 正]
『杉之原寿一訳『ゲマインシャフトとゲゼルシャフト』上下(岩波文庫)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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