ある観念をまとめて表現・主張する文章。定立あるいは措定(そてい)ともいう。定立に対立するのがアンチテーゼAntithese(ドイツ語。反定立)で、特定の肯定的主張に対応する否定的主張をいう。両方の矛盾・対立が統一された状態をジンテーゼSynthese(ドイツ語。総合)という。カントの二律背反では、同等の権利をもって語ることのできる、世界についての根本主張の最初の肯定的なほう、たとえば「自由は存在する」が定立であり、反定立は「自由は存在しない」である。フィヒテは、自我と非我の対立を、両者をともに可能にする第三者の内に総合する立場を、「定立―反定立―総合」と定式化した。
[加藤尚武]