定立(ていりつ)ともいう。(1)何かをそれとしてたてること、事態や対象の存在を想定したり肯定したりすることをさす。(2)狭義には、ある命題を証明なしに直接に主張する思考の働き、あるいはそのように主張された命題をいう。したがって措定は推論の開始をなす。(3)フィヒテでは自己や対象を生み出す自我の活動が、ヘーゲルでは弁証法の第一の契機(モメント)が措定とよばれるが、いずれも前述の二つの意味をあわせもっている。両者とも措定―反措定―総合という運動を考えたが、フィヒテが措定を絶対的であるとするのに対し、ヘーゲルは総合に強調点を置く。
[藤澤賢一郎]