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デジタル大辞泉
「二律背反」の意味・読み・例文・類語
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二律背反
どちらも妥当な命題同士が、互いに矛盾する状態にあること。互いに矛盾する二つのものが存在すること。
[活用] ―する。
[使用例] もはや捨吉は男女の性愛と学問・芸術との二律背反に苦しむ必要はなくなった[平野謙*島崎藤村|1946~56]
[使用例] そう言えば自分はいつもこれに似た二律背反の感情の間であがきながら生活をつづけ、書くことにその掃け口を見出して来たのだった[円地文子*彩霧|1976]
[使用例] カヤバはたえず二律背反に迫られていた。一方では自国民の反ローマ的感情を無視するわけにはいかず、そのくせ、そのローマ帝国との妥協的協定によって自分たち衆議会の権力が保たれているという矛盾が、彼をたえず悩ましていたのである[遠藤周作*イエスの生涯|1973]
[解説] 哲学者カントの用語「アンチノミー」の訳語です。たとえば、「世界に始まりはある」「世界に始まりはない」という二つの主張のように、互いに矛盾する、しかも、どちらもそれなりに説得力のある主張のペアのことを言います。
また、一般には、単に相反する性質のものごとを指しても使います。「環境を保護し、しかも経済的な利益を得るという二律背反を追求する」のように。
この一般的なほうの二律背反の例には、いろいろおもしろいものがあります。
劇作家の飯沢匡は、近藤真彦さんの歌った「ギンギラギンにさりげなく」を「二律背反が流行ってる」と評しました。たしかに、二つの形容は両立しません。
作家で同時通訳者の米原万里は、先輩通訳者の「物事に絶対なんてことは絶対にないんだからね」という発言を「二律背反の見本」と紹介しています。この意味では、英語の「ネバー・セイ・ネバー」(=「決して」とは決して言うな)も二律背反の慣用句と言えそうです。
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二律背反【にりつはいはん】
英語・ドイツ語アンチノミーantinomy,Antinomieの訳。相互に対立あるいは矛盾する二つの命題(テーゼとアンチテーゼ)が同時に同等の権利をもって主張されること。カントは主観から独立した一個の全体として世界をとらえようとするとき,理性が必然的に陥る自己矛盾を二律背反と呼んだ。たとえば,世界は時間的に初めがあり,空間的に限りがあるとするテーゼに対し,アンチテーゼが世界は時間・空間的に無限であるとする場合など。→パラドックス
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二律背反
にりつはいはん
antinomy 英語
Antinomie ドイツ語
antinomie フランス語
ギリシア語で法律の条文につじつまのあわないところがあるのをさすのに用いられたことばに由来する。一般に、それぞれ正しいことが明らかであるような二つの文が、論理的に両立しないことが発見されたときに、「二律背反に陥った」という。哲学的な議論は、二律背反とみえる状況を指摘し、ついで、それが見かけ上のものにすぎず、本当の論理的矛盾は存在しないことを示す方向に話をもっていく形で進行することが多い。しかし、カントは、「時間に始めがあるか否か」を問うようなときには逃れることのできない二律背反に陥るとし、これは、そのような問いに答えることが人間の知的能力の限界を超えているからであるとした。
[吉田夏彦]
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二律背反
にりつはいはん
Antinomie
論理的にも事実的にも同等の根拠をもって成り立ちながら,両立することのできない矛盾する二つの命題間の関係をいう,論理学の用語。たとえば「世界は時間的にも初めがあり,空間的にもかぎられたものである」「世界は時間的にも空間的にも無限である」というイマヌエル・カントにより立てられた二律背反は有名である。なお,今日ではパラドックスがこの意味に使われることもある。
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にりつはいはん【二律背反 antinomy】
アンチノミーの訳語。あることがらについてたがいに矛盾する命題が,同じように有効な基礎づけをもって主張されること。カントは,人間の理性が経験の限界をこえて無制約者を求めるとき,時空の限界の有無,世界の基本的構成単位の有無,自由と必然,絶対者の存在と非在などをめぐる二律背反に行きつかざるをえぬゆえんを示し,理性の限界への洞察によってそれを解決すべき一つの方向を提示した。パラドックス【坂部 恵】
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世界大百科事典内の二律背反の言及
【パラドックス】より
…もっと概念的なパラドックスには,数量,時間空間,運動,その他の抽象的なカテゴリーに関するもの,論理的パラドックスなどがある。時間・空間に関するパラドックスで有名なのはカントの二律背反である。これは,時間を無限の過去から流れてきたものとすればその反対の有限のものとしなければならなくなり,逆に有限なものとすればかえって無限の過去から流れてきたということになるとするものである。…
※「二律背反」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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