二律背反(読み)にりつはいはん(英語表記)Antinomie

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

二律背反
にりつはいはん
Antinomie

論理的にも事実的にも同等の根拠をもって成り立ちながら,両立することのできない矛盾する二つの命題間の関係をいう,論理学の用語。たとえば「世界は時間的にも初めがあり,空間的にもかぎられたものである」「世界は時間的にも空間的にも無限である」というイマヌエル・カントにより立てられた二律背反は有名である。なお,今日ではパラドックスがこの意味に使われることもある。

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百科事典マイペディアの解説

二律背反【にりつはいはん】

英語・ドイツ語アンチノミーantinomy,Antinomieの訳。相互に対立あるいは矛盾する二つの命題(テーゼアンチテーゼ)が同時に同等の権利をもって主張されること。カントは主観から独立した一個の全体として世界をとらえようとするとき,理性が必然的に陥る自己矛盾を二律背反と呼んだ。たとえば,世界は時間的に初めがあり,空間的に限りがあるとするテーゼに対し,アンチテーゼが世界は時間・空間的に無限であるとする場合など。→パラドックス

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世界大百科事典 第2版の解説

にりつはいはん【二律背反 antinomy】

アンチノミーの訳語。あることがらについてたがいに矛盾する命題が,同じように有効な基礎づけをもって主張されること。カントは,人間の理性が経験の限界をこえて無制約者を求めるとき,時空の限界の有無,世界の基本的構成単位の有無,自由と必然,絶対者の存在と非在などをめぐる二律背反に行きつかざるをえぬゆえんを示し,理性の限界への洞察によってそれを解決すべき一つの方向を提示した。パラドックス【坂部 恵】

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

二律背反
にりつはいはん
antinomy英語
Antinomieドイツ語
antinomieフランス語

ギリシア語で法律の条文につじつまのあわないところがあるのをさすのに用いられたことばに由来する。一般に、それぞれ正しいことが明らかであるような二つの文が、論理的に両立しないことが発見されたときに、「二律背反に陥った」という。哲学的な議論は、二律背反とみえる状況を指摘し、ついで、それが見かけ上のものにすぎず、本当の論理的矛盾は存在しないことを示す方向に話をもっていく形で進行することが多い。しかし、カントは、「時間に始めがあるか否か」を問うようなときには逃れることのできない二律背反に陥るとし、これは、そのような問いに答えることが人間の知的能力の限界を超えているからであるとした。[吉田夏彦]

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世界大百科事典内の二律背反の言及

【パラドックス】より

…もっと概念的なパラドックスには,数量,時間空間,運動,その他の抽象的なカテゴリーに関するもの,論理的パラドックスなどがある。時間・空間に関するパラドックスで有名なのはカントの二律背反である。これは,時間を無限の過去から流れてきたものとすればその反対の有限のものとしなければならなくなり,逆に有限なものとすればかえって無限の過去から流れてきたということになるとするものである。…

※「二律背反」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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