失透devitrification現象を利用してガラスを結晶化することによって作られたセラミック材料。結晶化ガラス,ガラスセラミックスglass ceramicsともいう。成形が容易であるというガラスの利点を生かしながら,結晶化させることによって,耐熱性,機械的強度,電気的物性などの機能を向上させることができる。どのような結晶を析出させるかによって,すなわちガラスの主たる組成によって,いくつかのグループに分類することができる。
(1)Li2O-Al2O3-SiO2系 主成分のほかに結晶核の形成を助ける成分としてZrO2,TiO2が添加されている。この系は耐熱性と機械的強度の向上を主たる目的とするものである。通常のガラスと同様のプロセスで溶融・成形したものを,750~800℃で再熱処理をし,その後900℃程度の温度に保持すると,β-石英を主体とする結晶相が析出する。この結晶は大きさが0.1μm程度と小さいため,可視光の散乱が起きず,したがって結晶相を含むにもかかわらず透明性を保持している。熱膨張率が低く耐熱性がすぐれていることと透明性を生かして,耐熱窓などに使われている。同じ組成のものを1000℃以上の温度で熱処理をすると,β-スポジュメン系の結晶相が析出し白色不透明になる。このデビトロセラミックスは機械的強度が大きく,また外観に清潔感があり美しい。パイロセラムPyroceram(アメリカのコーニング社の登録商標)と呼ばれ,耐熱性高級調理器やホットプレートの表面板などに大量に使用されている。
(2)Na2O-Al2O3-SiO2系 実用ガラスの組成に近いこの系はコスト面で有利である。TiO2を結晶核形成剤として添加し,熱処理によってネフェリン相(Na2O・Al2O3・2SiO2)を析出させたものは,白色の外観をもつデビトロセラミックスになる。このままでは耐水性は低く,また機械的強度も高くないが,この上に熱膨張率の低い釉(うわぐすり)をかけ,表面を圧縮強化する方法で食器などが作られている。
(3)MgO-Al2O3-SiO2系 ガラスは一般に,対応する結晶相と比較すると,イオンが固体中を移動するために電気伝導度が高い。そこで結晶化により高絶縁性デビトロセラミックスを得るもので,レーダードーム用としての応用例がある。
執筆者:安井 至
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…したがって母ガラス組成としては,ハロゲン化銀の溶解度や,析出のしやすさなどが問題となる。結晶化ガラスあるいはデビトロセラミックスは,ガラスの加工性のよさを生かしたまま,耐熱性などの物性の改善を目標として開発されたものである。熱処理によって,目的の結晶が目的の大きさで析出するような組成が選択され,かつ核生成剤が加えられている。…
※「デビトロセラミックス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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