北フランスのオイル語を用いた詩人兼作曲家の総称。trouver(新しいもの(詩,曲)を作る)から派生した。トルバドゥールの影響下に12世紀中葉ころから活動を始めたが,アリエノール(ギヨーム9世の孫娘)とフランス国王ルイ7世との結婚が大きな契機となった。なお,アリエノールの娘たち,シャンパーニュ伯に嫁いだマリー,ブロア伯に嫁いだアエリスも,母親同様に,文芸の愛好者・保護者の役割を果たし,トルベールや宮廷風騎士道物語作者を積極的に支援した。
トルベールが繰り返し歌ったのは,トルバドゥールに範を得た新しい愛であったが,後者が女性の肉体の美しさをも賛美し,肉体の愛を忌避していないのに対し,北国のトルベールは愛の精神性,規範への関心を強め,作品の官能性が希薄になる。愛用した詩型は〈シャンソン〉であるが,のちにロンドー,ビルレー,バラードを開発する。〈暁の歌〉や〈十字軍歌〉,詩論詩,風刺詩にも手を染めた。
代表的詩人としては,〈心臓を食う話〉の伝説と結びつけられたクーシー城代ギー,シャンパーニュ伯チボー,物語作者としてより有名なC.deトロア,アダン・ド・ラ・アルらがいる。
執筆者:新倉 俊一
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…F.シューベルトのリートを例にとれば,《野ばら》が第1の型,《菩提樹》が第2の型,《魔王》が第3の型の実例である。 西洋音楽の歴史では,早くも中世のトルベールやミンネジンガー(ミンネゼンガー)など騎士歌人の作品に有節形式の歌曲が現れる。ミンネジンガーという言葉が,そもそも〈愛の歌い手〉を意味するように,歌曲の最も普遍的な題材は,古来〈愛〉であった。…
…アルビジョア十字軍や貴族の結婚などを契機として,世俗歌の創作活動は,北フランスに波及し,やがてはドイツ文化圏においても継承された。その担い手は,南フランスではトルバドゥール,北フランスではトルベール(いずれも〈見いだす人〉の意),ドイツではミンネゼンガー(愛を歌う人)と呼ばれた。イタリアにもトロバトーレがいて,ダンテらもその影響を受けたらしいが,彼らの音楽は伝わっていない。…
…一つは武勲詩,もう一つは南フランスのトルバドゥールによるオック語の歌である。後者は13世紀になると北のトルベールによるオイル語の歌にとってかわられる。以上は騎士階級の単旋律の歌であるが,13世紀末には市民も交って作詩作曲するようになり,その代表が音楽劇《ロバンとマリオンの劇》をつくったアダン・ド・ラ・アルAdam de la Halle(1237ころ‐87?)である。…
※「トルベール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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