ミンストレル(読み)みんすとれる(英語表記)minstrel 英語

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミンストレル」の意味・わかりやすい解説

ミンストレル
minstrel

(1) 12~15世紀に活躍したフランスの世俗音楽家。フランスではメネストレル ménestrelと呼ばれた。元来,踊り手や軽業師などを含むこともあったが,正確には楽器の奏者を意味し,トルバドゥール貴族に仕えて楽器を弾き,歌う身分の低い職業音楽家をいった。 1313年にイープルミンストレルの学校が設置されてから,各地に学校ができたが,多くは楽譜を読まず,即興的な演奏をした。 14~15世紀にはフランス,イギリス,ドイツの都市でギルド的な組合を形成して栄えたが,17世紀にほとんど消滅した。 (2) 現在では,広く軽演劇やショーの芸人をいう。アメリカでは黒人の生活を滑稽にまねする白人のショーであったが,のち黒人によるミンストレル・ショー主流になった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミンストレル」の意味・わかりやすい解説

ミンストレル
みんすとれる
minstrel 英語
Minstrel ドイツ語

中世ヨーロッパで活躍した職業音楽家、芸人。フランスではメネストレルménestrelまたはメネストリエménestrierとよばれた。王侯貴族などに抱えられて、とくに騎士歌人らの作品を演奏したと考えられ、特定の楽器の演奏技巧に長(た)けた者が多かった。中世後期には、都市に定着して組合を組織する場合がしばしばみられた。しかし、その実態は地域や時代によって違いがあり、演奏の形態などははっきりとしたことがわかっていない。またイギリスでは、上流の騎士歌人やジョングルール(jongleur主人をもたない職業的芸能人)なども含めてよぶことが多かった。17世紀以後はみられなくなるが、ミンストレルの語は、民衆音楽家という広い意味で用いられ続けた。

[今谷和徳]

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