ナショナルトラスト(英語表記)National Trust

翻訳|National Trust

精選版 日本国語大辞典 「ナショナルトラスト」の意味・読み・例文・類語

ナショナル‐トラスト

〘名〙 (National Trust) 美しい自然や歴史的建造物市民からの寄付金などで買い取り保全し、次世代へ伝えようという環境保護運動。一八九五年イギリスでザ・ナショナル・トラスト設立とともに始まり、日本では、昭和四三年(一九六八)に財団法人日本ナショナルトラストが設立された。

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デジタル大辞泉 「ナショナルトラスト」の意味・読み・例文・類語

ナショナル‐トラスト(National Trust)

歴史的建造物と自然の保護目的とする英国の民間団体。1895年設立。寄贈や買い取りによってその土地を入手し、保全・管理する。
[補説]正式名称は、The National Trust for Places of Historic Interest or Natural Beauty
自然環境や歴史的地区などの保存を目的とした活動寄付金や会費などによって森林や海岸、歴史的建造物を買い上げ、保全を行う。トラスト。

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改訂新版 世界大百科事典 「ナショナルトラスト」の意味・わかりやすい解説

ナショナル・トラスト
national trust

元来は1895年イギリスに生まれた自然保護,史跡等保存のための民間組織である。現在はスコットランドにも同様の組織が作られ,オーストラリアにもやや組織形態の異なったものがある。ここでは主としてイングランドウェールズ北アイルランドにおけるナショナル・トラストについて説明する。

 このナショナル・トラストの創立者は弁護士ハンターRobert Hunter,婦人社会活動家ヒルOctavia Hill,牧師ローンズリーCanon Hardwicke Rawnsleyの3人である。正式の名称は,〈史的名勝・自然的景勝地のためのナショナル・トラストNational Trust for Places of Historic Interest or Natural Beauty〉で,ここにいうナショナルは〈国民の〉という意味である。基本的な考え方は,上記対象をこの組織が〈所有〉することによって,保護,保全しようとするものである。1800年代の後半,イギリスでは産業革命に伴って古い記念物が破壊され,自然破壊も進行した。ハンターは当時の法律の欠陥と闘うため,保護すべき対象の〈所有権〉を獲得することを考えて95年以降活動を開始し,さらに,1907年〈ナショナル・トラスト法〉を成立させて,ここにトラストの基礎が固まった。

 本法はその目的として〈美しい,あるいは歴史的に重要な土地や建物を国民の利益のため永久に保存する〉ことを定め,トラストがいったん取得したものについて,譲渡不能の旨宣言する権利をトラストに認めた。30年代には,領主館保存計画に関連する法律が制定され,その後のトラスト発展の一つの柱となった。すなわち,当時,相続法が変わり,かつての美しい領主の館や土地が,相続税支払のため遺族によって売りに出される例が顕著になった。そこで,こうした財産をトラストに寄贈すれば,遺族は引き続いてそこに住むことができるうえに相続税も免除されるという措置によって,多くの領主館が土地とともにトラストの所有となったのである。第2次大戦後に組織はさらに発展した。すなわち,一方で,産業革命当時の工場や運河が〈産業記念物〉として保全の対象になり,他方,トラストによる海岸線買収計画〈ネプチューン計画〉が推進された。65年に始められたこの計画は,早くも82年にはイングランド,ウェールズ,北アイルランドのまだ荒らされていない海岸線のうち約3分の1を,トラストの保護下に入れた。これらトラストの財政は,ほとんどが会員の,低額の会費と寄付によってまかなわれている(会費は1982年現在年額10ポンド)。発足当時数百人であった会員数は,第2次大戦終了時点で1万人に満たなかったが,82年には100万人を超えた。こうしてナショナル・トラストは,イギリスにおける民間最大の土地保有機関となっている。

 日本でも1960年代から大仏次郎らによってナショナル・トラストが紹介されたが,実際上はそれに匹敵する大規模な組織はいまだ生まれていない。北海道斜里郡斜里町の100m2運動,和歌山県田辺市天神崎の市民地主運動をはじめ,多くのなぎさ買収計画や町並保存計画等が知られる。上記トラストの事業を目ざしてつくられた環境資源保護財団も,いまだイギリスのように大規模なトラストを実現するステップとはなりえないでいる。しかし,日本でこのような組織を実現したいという要望は強く,83年には〈ナショナル・トラストをすすめる全国の会〉が結成され,92年には公益法人化されて〈社団法人日本ナショナル・トラスト協会〉が発足。ナショナル・トラストは,日本では国民環境基金などと訳されることもある。
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デジタル大辞泉プラス 「ナショナルトラスト」の解説

ナショナルトラスト

株式会社ハウスオブローゼが販売する基礎化粧品、ボディケア用品のブランド名。

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世界大百科事典(旧版)内のナショナルトラストの言及

【公害】より

…また琵琶湖の水質汚染に対し周辺の滋賀県の主婦たちが,リンを含む洗剤をやめて粉セッケンを使う運動を始め,それが契機になって滋賀県が富栄養化防止条例を制定したように,住民みずから環境汚染への責任はないかと自省して,すすんで生活方式の変革を試み,それを住民運動のエネルギーにするようになった。さらに住民がみずから寄金を出しあって保護すべき環境を買い取るナショナル・トラスト運動も,北海道の斜里町の知床半島の原生林復元運動や,和歌山県田辺市の天神崎買取り運動など各地で活発になってきている。住民運動が自治体をまきこんで積極的に環境創造の運動を展開していることは21世紀を目ざす新しい一つの運動の形態として注目される。…

【町並み保存】より

…歴史的記念物を保存する姿勢は18世紀から多くみられ,19世紀後半になると各国で文化財保護法が制定される。民間の保存団体として1895年にイギリスに設立されたナショナル・トラストは,邸宅建築をそこに営まれる生活を含めて保存しようとする考えを示したものとして画期的であった。20世紀に入り,1930年にフランスで制定された景観保護法では,記念物の周囲をも保護する考えが示され,43年には史的記念物monument historiqueの指定を受けた建築物の周囲500m以内の建物はすべて変更にあたって許可を要すると定められた。…

※「ナショナルトラスト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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