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全国的な都市化・工業化による公害と自然破壊に対して,生活基盤としての環境の重要性と自然そのものの社会的価値が再認識され,それに伴って自然保護関連法令の総合的調整のための基本的理念や制度的保障が必要であることから,自然環境の保全を全国的に総合的かつ統一的に推進するための基本法として1972年に制定・公布された法律。その内容は,自然環境を人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものとして位置づけ,自然環境保全基本方針その他自然環境保全の基本事項を定めるとともに,原生自然環境保全地域・自然環境保全地域の指定に基づく保全計画・保全事業の遂行および地域開発の際の自然環境の適正な保全を国に義務づけている。この法律によって,公害対策基本法とともに日本の環境行政の二大分野が制度上は確立した。この法律は,地域的特性にかんがみ,都道府県自然環境保全(自然保護)条例において,都道府県自然環境保全地域を独自に指定し,その地域につき国の自然環境保全地域に準じる規制措置を講ずることを認めた。これらの条例は,自然環境保全の基本的指針を示すとともに,自然環境保全法を補完するものであって,全都道府県で制定されている。条例は,地域的特殊性を反映しているが,自然環境保全の見地から大気・水・土壌・緑を立体的・総合的にとらえ,自然環境の保全・回復・育成について市民参加を打ち出している。1993年の環境基本法制定に伴い,一部改正。
→自然保護
執筆者:北原 宗律
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自然環境の適正な保全を目的とする法律。昭和47年法律第85号。国が自然環境保全基本方針を策定するとともに、原生自然環境保全地域と自然環境保全地域を指定して、保全のための各種規制と保全計画の策定、保全事業を行うことを定めている。原生自然環境保全地域は、人の活動によって影響を受けることなく原生の状態を維持している国・公有地のなかから指定され、植物・落葉・落枝の採取、車馬の乗入れなどまで禁止されている。自然環境保全地域は、高山性または亜高山性植生、優れた天然林のある地域、地形・地質が特異または特異な自然の現象のある地域、動植物を含む自然環境が優れた地域、熱帯魚・サンゴ・海藻などを含む自然環境が優れた地域、そして植物の自生地、野生動物の生息地でその区域における自然環境が、以上の区域における自然環境に相当する程度を維持しているもののなかから指定される。これには特別地区(このなかに野生動植物保護地区が指定される)、海中特別地区、普通地区がある。工作物の新改築、埋立て、干拓その他一定の行為が前二者では許可制となっており、普通地区では事後の命令付きの届出制となっている。都道府県もこの制度に準じて、条例により自然環境保全地域の制度を置くことができる。
[阿部泰隆]
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1972年に,天然林や山岳地域などの希少植生や野生動物,海沿岸や湖沼などの良好な生態系を維持している自然環境の保全と,国民の健康で文化的生活の確保を目的として制定された法律.当時は,自然環境保全にかかわる国などの責務・基本方針を定めた基本法部分と,すぐれた自然環境を有する地域を指定して,その保全方策などを定めた実施法部分をあわせもつ法律として制定されたが,1993年,環境基本法の制定に伴い,環境保全にかかわる責務などは環境基本法に包括削除され,現在は実施法的性格の法律となっている.
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