正称は〈古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法〉(1966公布)。後代の国民に継承されるべき古都における歴史的風土を保存するための法律。1965年の京都タワー建設計画,奈良公園の一角における奈良県庁舎建設計画,鎌倉市の八幡宮の裏山を削る宅地造成計画,翌年には《徒然草》にゆかりの深い双ヶ岡(ならびがおか)(京都市)のホテル建設計画など,各地で歴史的環境の破壊が社会問題となったことが本法制定の背景となった。本法にいう古都とは,京都市,奈良市,鎌倉市および政令で定めるその他の市町村であり,1984年9月現在,天理市,橿原(かしはら)市,桜井市,斑鳩(いかるが)町,明日香(あすか)村が政令により指定されている(2条1項)。内閣総理大臣は,古都における歴史的風土を保存するため必要な区域を歴史的風土保存区域として指定し(4条1項),同区域内における行為の規制その他歴史的風土の維持・保存に関する事項などを内容とする歴史的風土保存計画を決定しなければならない(5条1,2項)。また,同区域内において建築物の新築・改築・増築,宅地造成,木竹の伐採などをする場合には知事への届出を要する(7条1項)。さらに,同区域内の枢要な地域として定められる歴史的風土特別保存地区で上記のような行為をするには知事の許可を要し(8条1項),その許可が得られない場合については,それによって生じた損失の補償や土地買入れの制度が定められている(11条1項)。
文化財保護法などが重点的な物の保護であったのに対し,古都保存法は文化財の広域保存を内容とする法的措置である点に特色があるが,その内容および運用については批判もある。
→文化財保護法
執筆者:木村 実
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「古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法」(昭和41年法律第1号)の略称。2010年(平成22)現在、奈良市、京都市、鎌倉市、逗子(ずし)市、大津市、天理市、橿原(かしはら)市、桜井市、斑鳩(いかるが)町、明日香(あすか)村を古都として指定し、「わが国往時の政治、文化の中心等として歴史上重要な地位を有する」これらの都市の歴史的風土を保存するため、土地利用規制や施設整備を図ることを目的としている。土地利用規制の手法としては、歴史的風土保存区域と歴史的風土特別保存地区の指定がある。国土交通大臣は歴史的風土保存区域を指定し、歴史的風土保存計画を決定する。この区域内では建物の新改築などが届出制とされている。また、国土交通大臣は、この区域内の枢要部分について歴史的風土特別保存地区を定めることができ、この地区では建物の新改築などは原則として許可制とされ、許可を受けられない者には損失補償や土地の買入れがなされる。この法律の特別法として、1980年(昭和55)に制定された「明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法」(明日香保存特別措置法)がある。
[阿部泰隆]
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正称は「古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法」。古都として歴史的・文化的価値の高い京都・奈良・鎌倉の3市を乱開発から守るため,1966年(昭和41)に制定。明日香(あすか)村など数市町村が政令により追加指定された。同法の特別保存区域に指定されると,開発には知事の許可が必要。
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