ニトロフェノール(読み)にとろふぇのーるでーたのーと

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニトロフェノール」の意味・わかりやすい解説

ニトロフェノール(データノート)
にとろふぇのーるでーたのーと

ニトロフェノール
o-ニトロフェノール

 分子式  C6H5NO3
 分子量  139.1
 融点   45.8℃
 沸点   214~216℃/760mmHg
      96.4~96.8℃/10mmHg
 比重   1.2942(測定温度20℃)
 溶解度  2g/L水(25℃)

m-ニトロフェノール

 分子式  C6H5NO3
 分子量  139.1
 融点   97.6℃
 沸点   194℃/70mmHg
 比重   1.2797(測定温度100℃)

p-ニトロフェノール

 分子式  C6H5NO3
 分子量  139.1
 融点   114.9~115.6℃
 沸点   279℃/760mmHg
      186℃/18.7mmHg
 比重   1.2703(測定温度120℃)
 溶解度  16g/L水(25℃)
 解離定数 1.26×10-7(25℃)


ニトロフェノール
にとろふぇのーる
nitrophenol

芳香族ニトロ化合物の一つ。ベンゼン環ヒドロキシ基-OHニトロ基-NO2がついた化合物で、ニトロ基の置換位置によりo(オルト)-、m(メタ)-、p(パラ)-ニトロフェノールの三異性体がある。オルト体(融点45.8℃)、メタ体(融点97.6℃)は黄色、パラ体(融点114.9~115.6℃)は無色結晶で、いずれもフェノールよりも酸性が強く、アルカリ水溶液や、種々の有機溶媒によく溶ける。フェノールに33%硝酸を加えると、オルト、パラ体の混合物を生ずるので、水蒸気蒸留により留出するオルト体と残るパラ体とを分離する。メタ体は、m-ニトロアニリンをジアゾ化し、水と加熱すれば得られる。いずれも、還元すれば対応するアミノフェノールになるので、種々の染料や医薬、写真現像薬などの製造に用いられる。

[加治有恒・廣田 穰 2015年3月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「ニトロフェノール」の解説

ニトロフェノール
ニトロフェノール
nitrophenol

C6H5NO3(139.11).C6H4(OH)NO2o-,m-,p-ニトロフェノールの3種類の異性体がある.フェノールを希硝酸でニトロ化すれば,o-およびp-ニトロフェノールが生成し,前者は水蒸気蒸留によって留出するので両者を分離することができる.m-ニトロフェノールは,m-ニトロアニリンのジアゾ化,ついでジアゾニウム基の加水分解によって合成できる.いずれも常温では淡黄または黄色の結晶で,ニトロ基の電子求引性のためにヒドロキシ基の酸性はかなり強く,pH 指示薬として用いられる.エタノールエーテルベンゼン,および熱水,希アルカリ水溶液に易溶.還元すればそれぞれ相当するアミノフェノールとなる.染料,医薬,農薬などの合成中間体である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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