ネグロイド(読み)ねぐろいど(その他表記)Negroid

翻訳|Negroid

デジタル大辞泉 「ネグロイド」の意味・読み・例文・類語

ネグロイド(Negroid)

ニグロイド

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネグロイド」の意味・わかりやすい解説

ネグロイド
ねぐろいど
Negroid

モンゴロイドコーカソイドと並ぶ、いわゆる三大人種群の一つ。ニグロイドともいう。体表が黒っぽいところから黒色人種ともよばれる。ちなみにラテン語のnegroは「黒」、oidは「のような」を意味する。主たる分布域はサハラ以南のアフリカであるが、オセアニアの一部を含めることもある。この人種群の共通の特徴は皮膚・毛髪・虹彩(こうさい)など体表の色の黒いことであるが、これに属するものすべてが共通の祖先に由来するわけではない。したがって、それはただ便宜的にまとめた伝統的な区分にすぎず、かならずしも系統的な親近性を示す集団ではない。皮膚の色が濃いのは、表皮と真皮の接合部を中心にメラニン色素が沈着するからであり、これによって太陽光線中の紫外線透過を防ぐ。一般に紫外線は皮膚に火傷同様な損傷を与えるため、日光の強い低緯度地帯では皮膚の色の濃いほうが有利である。もちろん濃い色の皮膚は日光中の熱線をより多く吸収して、体が熱くなるが汗腺(かんせん)機能が発達すれば、それに伴い、体熱を発散させることができる。一方、骨の発育に欠かせないビタミンDは人体ではとかく不足し、また不活性でありがちであるが、日光とくに紫外線の照射によって生成される。以上の理由により、ネグロイドは熱帯地方に集中して分布していた。今日でも十分な予防策を講じなければ、日光の弱い高緯度の寒帯地方では、彼らはくる病になるおそれがある。また凍傷になりやすい。ネグロイドは熱帯への適応性をもった人々であるといえる。

[香原志勢]

人種的特徴

濃い色の皮膚、発達した汗腺のほか、縮れた黒い頭髪があげられる。縮れの程度にも、1本1本が独立に巻く螺髪(らほつ)の状態から、互いに絡み合うものまである。このように毛髪が絡み合うことにより、頭髪内に断熱空気層が形成され、頭部を強烈な直射日光から防ぐと考えられている。頭髪はあまり長く伸びないものが多く、頭部からの汗は発散しやすい。目の虹彩は黒く、光をまったく通さないため、強烈な日光下でも鮮明な像を網膜内につくることができる。一般に体格は細長痩身(そうしん)であり、体幹に比して四肢が長い。これは体重に対して体表面積が広く、体熱放散に適している。皮下脂肪も薄い者が多い。一般的に咀嚼(そしゃく)器は大きく、軽く突顎(とつがく)状の顔をしており、歯列弓も大きい。長頭で、比較的頭の高さは低い。程度の差はあるが、鼻は幅広で、低く、なかには押しつぶされたようなものがある。唇は肥厚し、移行部にもメラニン色素が沈着するが、口腔(こうくう)粘膜はもちろん赤い。耳介は幅広で、丸みを帯びている。手掌や足底の皮膚の色は淡い。上腕に比して前腕、大腿(だいたい)に比して下腿が長い。ふくらはぎは細く、すんなりしている。胸は幅広で、腰は狭く、後突する。身長はさまざまであり、ナイル川上流の成人男子の平均は180センチメートルを超え、一方ピグミーは150センチメートルに満たない。機能的特性として、優れた跳躍力があげられる。毀傷(きしょう)後の皮膚にはケロイド痕(こん)が残りやすい。中部アフリカを中心としたネグロイドの間には鎌(かま)状赤血球貧血症が多発するが、それはこの地方に蔓延(まんえん)するマラリア症に対する適応現象であり、かならずしも人種特徴とはいえない。なおネグロイドの間では二卵性双生児の出生率は1000人中20人というように高頻度である。

 この人種群はアフリカ・ネグロイド、エチオピア人、コイサン人、ピグミー、それにメラネソイド、に大別できるが、相互の系統関係は遠い。アフリカ・ネグロイドはサハラ以南のアフリカに広がり、地域的にさらに細かく分けることができる。スーダン人は西アフリカの森林・草原に住む典型的ネグロイドで、皮膚の色は濃い。その南に分布するギニア人は前者より皮膚の色が淡く、突顎の度合いは少なく、体格はずんぐりとしている。コンゴ人は熱帯降雨林に多く住み、濃褐色の皮膚で、突顎の度は強く、幅広い鼻をしている。南アフリカ人はアフリカ南東部に分布し、皮膚はチョコレート色をしており、鼻の幅は広く、突顎の度は弱い。バントゥーともよばれる。マダガスカルにも住むが、インドネシア人との混血が大幅にみられる。ナイル川上流地方に住むナイロートは著しく高身長・細身で、皮膚の色は濃く、鼻幅は広いが、直顎に近い。アフリカ・ネグロイドは一時期奴隷として南北アメリカ大陸に強制的に移住させられたが、今日その子孫がアメリカ先住民やコーカソイドとの混血をも含めて、多数同大陸に居住している。エチオピア人はアフリカ・ネグロイドとコーカソイドの中間型ともいえる特徴をもつ。皮膚は黒いが、波状毛で、鼻は高く、直顎で、唇は薄い。コイサン人は縮毛が著しく、皮膚は黄褐色、低身長である。眼瞼(がんけん)には独特な皺(しわ)があり、目はつり上がる。女性の臀(しり)は突出し、脂臀(しでん)とよばれる。先史時代にはアフリカ南半分に分布したが、いまは南西部のカラハリ砂漠周辺の小地域に追い詰められて住む。ピグミーはアフリカから東南アジアに至る熱帯降雨林内に少数ながら散在する。成人男子の平均身長は150センチメートル未満で、皮膚の色は濃く、縮毛の度が強い。アフリカ在住者をネグリロ、東南アジア在住者をネグリトといい、かつては両者は同一人種とみられたが、最近の研究では非常に疎遠であると考えられている。同様、メラネソイドはアフリカ・ネグロイドとは別系統で互いに独立した集団である。メラネシア、ニューギニアに分布する。鼻は鉤鼻(かぎはな)で大きい。頭髪は長く逆立ち、毛先が縮れる。唇は厚い。

[香原志勢]

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ネグロイド」の解説

ネグロイド
Negroid

いわゆる三大人種の一つ。黒色の皮膚,縮れた頭髪,厚い唇が最も基本的な特徴。アフリカには皮膚の黒い人々のなかにエチオピア人,スーダン系,バントゥー系,コイサン系などの人々がおり,ネグロイドすなわち黒人として一括されることが多いが,遺伝学的には非常に遠い関係にあり,ネグロイドという分類には疑問が多い。かつては外見上の類似から東南アジアのネグリトやオセアニアの一部の住民もネグロイドに入れられたが,これらはむしろモンゴロイドである。また,黒人という日本語も人類集団の科学的分類用語としては成り立たない。たんに皮膚が黒いという以外に意味を持たないからである。しかもその色と他の色との差は連続的である。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ネグロイド」の解説

ネグロイド
Negroid

人類学上の定義における黒色人種群
いわゆる四大人種の1つで皮膚 (ひふ) は濃い黒または褐色,ちぢれ毛と広い鼻をもち,唇が厚く,口辺は突き出している。アフリカのサハラ以南が居住地で,ネグロ人・ネグリト人・メラネシア黒人などがこれに属し,16世紀以降,アフリカから黒人奴隷として多数アメリカに移入された。

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改訂新版 世界大百科事典 「ネグロイド」の意味・わかりやすい解説

ネグロイド

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百科事典マイペディア 「ネグロイド」の意味・わかりやすい解説

ネグロイド

ニグロイド大人種

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