ノロ(読み)のろ(英語表記)roe

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノロ」の意味・わかりやすい解説

ノロ
のろ
roe
[学] Capreolus capreolus

哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目シカ科の動物。ノルともいう。中形のシカで、ヨーロッパ、中国、中近東と分布域が広い。地域によりいくつかの亜種があるが、大きく次の3亜種に分けられる。ヨーロッパノロC. c. capreolusは、ヨーロッパから中近東にかけて分布する。肩高60~68センチメートル。マンシュウノロC. c. bedfordiは、肩高65~78センチメートル。夏毛と冬毛の色彩的差異があまりない。中国、朝鮮半島などに分布する。オオノロC. c. pygargusは、3亜種のなかで最大で、肩高70~90センチメートル。アルタイ、アムール地方に産する。

 本種の毛色は、夏毛は赤黄色、冬毛は灰褐色。晩春から初夏にかけて成獣のは縄張り(テリトリー)をつくる。7月下旬から8月上旬の発情期に入ると、雄は雌を追い、2頭はノロの輪といわれる円を描くように走る。妊娠期間は9か月半にもなる場合があり、受精卵の着床遅延が認められている。出産期は5~6月。1産に普通2子、ときに3子、まれに4子を産む。寿命は15年ぐらいである。

増井光子


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ノロ」の意味・わかりやすい解説

ノロ

祝女とも書く。沖縄本島奄美群島における公的司祭者としての神女のこと (→ユタ ) 。この地方における神女組織は,琉球王朝確立とともに整備され,ノロは1集落ないし数集落の祭祀組織を統率した。ノロという語は,祈る,祈る人,神の意思を述べる人などので,9世紀頃から存在した。一般にノロは任命制で選ばれ,神衣装,銀の (かんざし) ,扇,ノロ地と呼ばれる土地が与えられるが,各村ではノロの出る家柄は決っていた。ノロの住居ノロ殿内と呼ばれ,守護神として火の神を祀っていた。ノロ制度は明治初年に廃止されたが,神役名称としては今日も残っている。

ノロ
Capreolus capreolus; roe deer

偶蹄目シカ科。体長 95~130cm,体高 65~85cm。角は雄だけに生えるが,短く,普通は3枝。夏毛は赤褐色であるが,冬毛は灰色がかった褐色で,尻に白い大きな斑紋が現れる。ヨーロッパ,中国,朝鮮半島,アムール地方に分布し,低地から高地までの森林に生息する。肉は美味。

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百科事典マイペディア 「ノロ」の意味・わかりやすい解説

ノロ

ノロジカとも。偶蹄(ぐうてい)目シカ科。体長1〜1.1m,肩高64〜89cm。夏毛は赤褐色,冬毛はオリーブ褐色で,しりに大きな白斑が現れる。ヨーロッパ〜中国東北部,朝鮮半島,アムール流域に分布。疎林や低木の多い草原にすみ,朝夕1対または小群で出歩き,草や木の若芽,果実などを食べる。1腹2子前後。肉は良質で美味。
→関連項目与論島

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