聞得大君(読み)きこえおおぎみ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「聞得大君」の意味・わかりやすい解説

聞得大君
きこえおおぎみ

琉球(りゅうきゅう)王朝時代の最高の女性神官。方言ではチフィジンと発音する。君は女性神官の称、キコエは有名なという意味で美称である。神殿のある居所を聞得大君御殿(うどぅん)という。各地の祝女(のろ)あるいは司(つかさ)とよばれる女性神職を底辺とした首里(しゅり)王府の女性神官組織の頂点に位置する。行政機関の最高権威者の国王と並ぶ地位で、国家的神事を主宰し、神官行政の最高権威者であった。かつては国王を決定する神事もつかさどり、宗教的権威が行政的権威を上回っていた時代もあるらしい。初見は、尚円王の女子で、尚真王の姉妹にあたる音智殿茂金(おとちとのもえかね)で、「玉陵(たまうどぅん)の碑の文(もん)」(1501)にみえる。村の旧家の男子が根人(ねひと)(ニーンチュ)として行政に、女子が根神(ねがみ)(ニーガン)として神事にかかわる習俗の国家的表現で、本来は王女が就任した。女性官職の最高位であったが、1667年に王妃の次位となり、1677年には王妃が就任する定めになった。1879年(明治12)廃藩置県で公的意義を失ったが、私的には1944年(昭和19)まで続いた。

[小島瓔

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百科事典マイペディア 「聞得大君」の意味・わかりやすい解説

聞得大君【きこえおおきみ】

沖縄にあったおなり神の最高位。王府により王の姉妹または王女の中から任命された。〈祝女(のろ)〉などの巫女(みこ)を統率し,沖縄における祭祀の一切を統括するもので,初めは国王と並んで,王妃よりも上位におかれた。
→関連項目首里王府斎場御嶽のろ(神女)琉球琉球文化

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「聞得大君」の解説

聞得大君
きこえおおきみ

首里王府において国家的な女性司祭組織の頂点に位置する司祭。方音ではチフィジン。制度化されたのは第二尚氏王統(1470年)以降のことである。聞得大君は,地方の女性司祭を管轄する三平等(みひら)のオオアムシラレや,三十三君(きみ)と称される中央の女性司祭集団を統轄し,国王や王室繁栄を祈り,王国レベルの祭祀儀礼を施行した。廃藩置県まで,王女・王妃・王母などがその職につき,就任式であるお新下り(あらおり)はセーファウタキ(斎場御嶽)で行われた。

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世界大百科事典(旧版)内の聞得大君の言及

【沖縄[県]】より

…家族レベルの儀礼は屋敷の南東部で行われ,便所と豚小屋は北西隅におかれることが多い。琉球料理
[信仰]
 15世紀以降,沖縄では国王の宗教政策によって神女組織がつくられ,〈聞得大君(きこえおおぎみ)〉と称する国王の姉妹または王妃が,最高の女祭司官として頂点に立ち,その下に大アムシラレという女祭司が3人いて全地域のノロ(祝女)を統轄させた。〈聞得大君〉は高級神女三十三君の上位に位する大君であり,聞補君(ちふじん)ともあてられ,名高い意でキコエを冠するという。…

【のろ(祝女)】より

…さらに地方に割拠する按司を統一して15世紀末に尚王朝が確立すると,首里王府はそれら旧来の組織を利用しながら公的祭祀をつかさどる公儀ノロを任命し,辞令,勾玉,俸禄などを給して,王国の政治宗教的組織の一部に組み込んだ。各地域のノロの頂点には,国王の姉妹である聞得大君(きこえおおぎみ)が立った。現在ではこのヒエラルヒーは崩壊し,ノロは村落の主要な年中行事の主宰者として機能している。…

【ビロウ(蒲葵)】より

…一方で,クバは容器や建築材,さらには船の帆と,日常生活の全般にわたって広く使われた。また,かつての琉球の最高位の女神官であった聞得大君(きこえおおきみ)が斎場(さいは)御嶽で即位式を行う際にもこのクバで葺(ふ)かれた仮屋が作られた。このように,沖縄では神事と実用の両面で,クバが重要な役割を果たしている。…

※「聞得大君」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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