ハイギョ(その他表記)lung fish

改訂新版 世界大百科事典 「ハイギョ」の意味・わかりやすい解説

ハイギョ (肺魚)
lung fish

硬骨魚綱肺魚亜綱Dipnoiに属する淡水魚の総称。体はやや延長し,尾端はとがっている。骨格は硬骨と軟骨とからなり,脊柱は発達が不十分で椎体がなく,脊索は厚い鞘で包まれ,終生円筒状をなして残る。眼は小さく,鼻孔は口唇の内側に開く。口も小さく,放射状に生えた特殊な歯がある。うろこは円鱗。胸びれ腹びれ葉状またはむち状。背びれ尾びれしりびれは連続していて,鰭条(きじよう)は角質。うきぶくろは正中線でわずかにくびれて1室をなすか,または完全に左右の2室に分かれていて,内面は胞状ないし網状に隆起して,血管に富み,また気管食道の腹側に連なり,その連接部には弁がある。腸には板鰓(ばんさい)類と同様に螺旋(らせん)弁があり,肛門は泌尿生殖口とともに総排出腔に開く。

 食性は草食性のものもあり,また小魚甲殻類,貝類などを補食するものもある。溶存酸素が十分にある水中ではえらで呼吸をするが,乾季になるとわずかに残った水たまりに潜むか,あるいは泥底に坑道を掘って,その中で休眠し,その間はうきぶくろで空気呼吸をしてしのぐ。再び雨季が訪れ,穴が水に浸ると泳ぎだしてえら呼吸にもどる。もともと陸生脊椎動物の肺と魚のうきぶくろとは相同の器官であるが,この類のうきぶくろが肺とよく似た構造に分化し,これで空気呼吸をすることから〈肺魚〉の名が与えられた。

 卵はやや大きく,ゼリー状の被膜に包まれて産みだされるが,この被膜は水に触れると吸水して著しく膨らみ,水底の穴の内壁水草などに粘着する。

 肺魚類古生代デボン紀後期から二畳紀にかけて栄え,世界各地の淡水域に広く分布していたので,多くの化石が残されているが,その後急速に衰亡の途をたどり,現生種はオーストラリア,南アメリカ,アフリカの3大陸に3科3属5種が知られているだけである。日本の水族館でもネオセラトダス(エピセラトダス),レピドシレンプロトプテルスが観覧に供されている。この類は孵化(ふか)した仔稚魚(しちぎよ)が種類によりカエルの幼生のような外鰓(がいさい)や頭部腹面に接着器官をもつものがあること,うきぶくろが空気呼吸の機能をもつこと,その他発生上の特徴などから両生類との進化史上の関係が論じられている。
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百科事典マイペディア 「ハイギョ」の意味・わかりやすい解説

ハイギョ(肺魚)【ハイギョ】

硬骨魚類肺魚亜綱の魚の総称。呼吸器としてよく発達したうきぶくろをもつのが特徴。胸びれ,腹びれなどは原鰭(げんき)といわれる原始的な状態にあり,また四肢動物のように内鼻孔をもつなど,一般の硬骨魚類とは大いに異なる。体長1〜1.8m。化石はデボン紀から出るが,現生種は3科3属5種。南米のレピドシレン,オーストラリアのネオセラトダス,アフリカのプロトプテルスなどは,日本の水族館でも観賞できる。プロトプテルスは乾季には泥中にもぐって粘液で繭をつくり,その中で夏眠する。

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