日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハチクラゲ類」の意味・わかりやすい解説
ハチクラゲ類
はちくらげるい
腔腸(こうちょう)動物門の1綱Scyphozoaの海産動物の総称。ハチムシ類ともいう。一部の例外を除いてポリプとクラゲの両方の世代をもつ。一般にポリプ世代は小形で目だたないが、それに対してクラゲ世代は大形となり、クラゲとしてよく発達していることが多い。ポリプ、クラゲともに、同じ腔腸動物の別の1綱であるヒドロ虫類のそれよりも、その構造はより発達している。ポリプの胃腔内には縦に四つの隔膜があり、また口盤上には漏斗(ろうと)管とよばれる四つのくぼみがつくられている。また、クラゲはその傘縁に普通16個以上の縁弁をもち、また中膠(ちゅうこう)が発達し、胃腔には内胚葉(ないはいよう)に囲まれて下傘側に胃糸が生じている。生殖腺(せん)はヒドロ虫類の場合とは異なって内胚葉から生ずる。
受精卵はプラヌラ幼生となり、プラヌラは海底に付着して小形のハチポリプとなるが、このハチポリプからは無性的にエフィラとよばれる小さな幼クラゲが生ずる。ミズクラゲなどでは、付着したハチポリプは皿を重ねたような形のストロビラというものになり、それが上方から一つずつ離れてエフィラとなって泳ぎ出る。本綱に属する十文字(じゅうもんじ)クラゲ目のものだけは一生付着生活を送っており、このような世代交代はみられない。
ハチクラゲ綱は十文字クラゲ目、立方クラゲ目、冠(かむり)クラゲ目、旗口(はたくち)クラゲ目、根口(ねくち)クラゲ目に分けられるが、このうち立方クラゲ目だけはほかの目とは別に、一つの独立した綱とすべきであるとする学者もある。ハチクラゲ類はすべて海産で、ミズクラゲ、アカクラゲ、ユウレイクラゲ、タコクラゲ、ビゼンクラゲなど、日本沿岸に普通の種類が多い。
[山田真弓]