改訂新版 世界大百科事典 「タコクラゲ」の意味・わかりやすい解説
タコクラゲ
Mastigias papua
ハチクラゲ綱タコクラゲ科の腔腸動物(刺胞動物)。別名ハチマンクラゲ。水戸以南の暖海に分布し,沿岸に群れをつくるが,水温が20℃以下になると死んでしまう。かつては,神奈川県の油壺湾でも大量に見られたが,今はそのようなことはない。かさは直径9~20cmのドーム型で,寒天質が厚い。かさの下には複雑な口腕部があり,棒状の付属器が8本たれ下がっている。かさの色は茶褐色で,白い斑点が散在しているが,無色のものや,藍色の個体もある。かさの茶褐色の色はクラゲの地色ではなく,ゾーキサンテラZooxanthellaという下等な藻類がクラゲの体内に無数に共生しているためである。この藻類がクラゲの体内に入るのは,高さ2mmくらいのポリプの時代であって,ポリプの口から胃腔内へ入り,その後組織へ移って,水温があがるに従って増殖する。一方,ポリプはこの増殖に刺激されて,クラゲへの変態が誘発されるという。雌雄異体。大きな口はなく,口腕部に開いている多くの小さい吸口から,水とともにプランクトンを吸いこんで細い管を通じて胃腔に送る。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報