ハンガリー語(読み)ハンガリーゴ(その他表記)Hungarian

翻訳|Hungarian

デジタル大辞泉 「ハンガリー語」の意味・読み・例文・類語

ハンガリー‐ご【ハンガリー語】

ウラル語族フィン‐ウゴル語派に属する言語ハンガリーほか、その周辺諸国に使用者をもつ。

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精選版 日本国語大辞典 「ハンガリー語」の意味・読み・例文・類語

ハンガリー‐ご【ハンガリー語】

  1. 〘 名詞 〙 ウラル語族フィンウゴル語派に属する言語。ハンガリーのほか、ルーマニア、旧ユーゴスラビア、チェコスロバキアなどの一部で話される。ハンガリー人みずからはマジャール語と称する。

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改訂新版 世界大百科事典 「ハンガリー語」の意味・わかりやすい解説

ハンガリー語 (ハンガリーご)
Hungarian

ハンガリーの公用語で,ハンガリー国内を中心として,ルーマニアのトランシルバニア地方,セルビア共和国北部のボイボディナ地方,スロバキアなどで話されている。自称マジャールMagyar語。話し手の数は約1300万。方言的差異は比較的少ないが,セーケイ方言(トランシルバニア地方),パローツ方言(スロバキア)は,他の諸方言とかなり異なった特徴を示す。系統上では,ウラル語族のウゴル語派に属し,ロシア連邦の西部シベリアの少数言語ボグル(マンシ)語オスチャーク(ハンティ)語と最も近い関係にある。

 文字はラテン文字を用いるが,母音では長母音を表すá,ó,ú,é,í,o″,u″があり,子音には,sz[s],zs[ʒ],dz[dz],cs[tʃ],dzs[dʒ],ty[c],gy[ɟ],ly[j],ny[ɲ]のように二つまたは三つの文字で表されるものもある。アクセント(強さアクセント)は常に単語の第1音節にある。また,奥舌母音・前舌母音(場合によっては円唇母音・非円唇母音)の別に基づく母音調和の現象がある。動詞の人称活用に,動作・行為の主体を示す主体活用(不定活用)のほか,その対象をも示す対象活用(定活用)があることなど,ウラル系諸言語のなかでも古風な特徴を保っているが,一方,多くの接頭辞定冠詞を用いるなど,他のウラル諸語とは異なる外来的影響も見られる。

 ハンガリー(マジャール)民族は,ウラル山脈付近の故地から現住地までの長期間の民族移動の過程で,さまざまな他民族の影響を受けたため,チュルク系,スラブ系諸言語からの借用語が多く,ヨーロッパに定住した後もドイツ語からかなりの語彙を借用している。現在のハンガリー語の語彙においても,これら3系統の借用語はそれぞれ7~10%を占める。ハンガリー語で書かれた現存最古文献は,12世紀末のラテン語文書中の《弔詞》であるが,地名人名などの断片的資料は,10世紀ころの東ローマ(ビザンティン)帝国の記録中にも見ることができる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハンガリー語」の意味・わかりやすい解説

ハンガリー語
はんがりーご

ウラル語族のウゴル語派に属する言語。系統的には西部シベリアのオビ・ウゴル語マンシ語ハンティ語)ともっとも近い親縁関係にある。自らはマジャール語と称する。ハンガリー語を話す人口総数は約1400万人で、そのうち約1000万人がハンガリー国内におり、他はルーマニアのトランシルバニア地方(約160万)、旧ユーゴスラビアの北部(約50万)、スロバキア地方(約40万)、ウクライナ地域(約15万)、オーストリア東部(約1万5000)などに少数民族として住んでいる。このほか、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどのハンガリー系移民のなかにもかなりのハンガリー語人口がある。方言的差異はそれほど大きくはないが、トランシルバニア地方のセーケイ方言、スロバキア地方のパローツ方言は顕著な特色を示す。ハンガリー語の特徴としては、音韻面では厳密な母音調和をもつこと、形態面では、格語尾によって示される格の数が20近くあること、名詞の所属人称語尾があること、動詞の人称活用に主体活用のほか対象活用があること、また、三人称を主語とする文において繋辞(けいじ)(コピュラ)を用いないこと、などがあげられよう。ハンガリー(マジャール)民族は、その先住地と推定されるウラル山脈付近から長期間の民族移動によって、9世紀末に現在の住地、ドナウ盆地に入ったが、その間ハンガリー語はチュルク語から多くの語彙(ごい)を借用した。さらに、ドナウ盆地に定住したのちは、周辺のスラブ諸語から、またハプスブルク・オーストリアの統治時代にはドイツ語から、多くの借用語を受け入れた。ハンガリー語の古い記録に関しては、すでに10世紀ごろの東ローマ帝国の文書に地名・人名などが記されているが、ハンガリー語で書かれた最古の文献は、12世紀末のラテン語文書中に挿入された短い「死者の辞」である。文字は現在もラテン文字が用いられる。

[徳永康元]

『今岡十一郎著『ハンガリー語4週間』(1969・大学書林)』『岩崎悦子、浅津ケステューシュ・エルジェーベト著『ハンガリー語I』(1987・大学書林)』

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百科事典マイペディア 「ハンガリー語」の意味・わかりやすい解説

ハンガリー語【ハンガリーご】

ハンガリー人(マジャール人)の言語。マジャール語とも。西シベリアのマンシ語ハンティ語とともにウラル語族のフィン・ウゴル語派のウゴル語派をなし,フィン語派の諸語,サモエード諸語と親族関係にある。母音調和や膠着(こうちゃく)語的文法構造のほか,動詞の活用体系(対象活用)に特色がある。最古の文献は13世紀の祈祷書。16世紀の国民文学の興隆によって文章語がほぼ確立し,その後異民族の侵入のため一時衰えたが,18世紀には再び盛んとなり,外国語からの借用語を追放するなどの言語純化運動が行われた。ハンガリー中心に,ルーマニア,スロバキアなどで1300万人に話される。
→関連項目ルーマニア語

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハンガリー語」の意味・わかりやすい解説

ハンガリー語
ハンガリーご
Hungarian language

自称はマジャール語。ハンガリーを中心に,旧ソ連,ルーマニア,チェコ,スロバキア,旧ユーゴスラビアなどに 1400万人以上の話し手をもつ。ウラル語族最大の言語。フィン=ウゴル語派のなかのウゴル語派に属する。内部の方言的差異は比較的少い。音韻面では破裂音・破擦音に有声,無声の対立をもつこと,母音調和をもつこと,形態面では所属人称語尾をもつこと,格語尾が複雑で 20格近くあること,活用に主体活用のほか,三人称の特定の目的語をとるときの対象活用のあること,語彙面では,借用語の多いことなどが特色。ハンガリー語で書かれた最初の文献は 12世紀にみられ,ウラル語族のなかで最も古い。

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世界大百科事典(旧版)内のハンガリー語の言及

【ウラル語族】より

…ウラル語族はまずフィン・ウゴル語派サモエード諸語に大別される。さらにフィン・ウゴル語派は,バルト・フィン諸語Balto‐Finnic(フィンランド語,カレリア語,エストニア語,ボート語ほか)やモルドビン語,チェレミス語(マリ語),ボチャーク語(ウドムルト語),ジリャン語(コミ語)などを含むフィン語派Finnicと,ハンガリー語,ボグル語(マンシ語),オスチャーク語(ハンティ語)などを含むウゴル語派Ugrianに区分される(図)。これら言語の間には基本的語彙に厳密な音韻の対応が見られる。…

【母音調和】より

…tietä‐ä〈知る〉という動詞には,前舌用の第1不定詞語尾‐äがついているが,この語から派生した名詞形tieto〈知識〉には後舌母音oが用いられている。 ハンガリー語(方言)でも母音は同じく,(a)前舌群/ü[y],ö[φ],ɛ/と,(b)後舌群/u,o,a[ɒ]/,それに(c)中立群/i,e/の3グループに分かれている。例:後舌母音のみ tanuló〈生徒〉,前舌母音のみ tükör〈かがみ〉,中立母音と後舌母音から ceruza〈鉛筆〉,中立母音と前舌母音から rövid〈短い〉。…

※「ハンガリー語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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