バンコク爆弾テロ(読み)ばんこくばくだんてろ

知恵蔵 「バンコク爆弾テロ」の解説

バンコク爆弾テロ

2015年8月17日にタイの首都バンコクで起きた爆弾テロ事件。ヒンズー教の神を祀(まつ)ったエラワン廟(びょう)近くで爆発が起こり、外国人を含む死者20人、負傷者125人を出した。翌18日にも同市中心部のチャオプラヤー川のボート乗り場近くで爆発が起きている。タイ警察は9月になって、ウイグル族出身とみられる2人の男の犯行であり、両名を拘束したと発表した。
14年5月の軍によるクーデター以降、タイ国内の爆弾テロ事件はこれが初めてではない。15年2月にはバンコクの目抜き通りにあるショッピングモールで、4月には同国南部のリゾート地サムイ島で爆弾が爆発し、負傷者が出る事件が起きていた。一連の事件について様々な臆測が流れていたが、犯人側からの声明などは出されておらず、当局の発表も「人身売買グループ」による報復説、国内反乱勢力の行為などと一貫しなかった。いずれにしても、同国の軍事政権に対する反発として、観光業や経済にダメージを与えることを目的とした爆弾テロと考えられた。
事件に関連して、20人ほどに逮捕状が出たり拘束されたりしている。エラワン廟前では、「黄色いシャツの男」が、爆弾が入っていると見られるバックパックを現場に置く姿が防犯カメラに映っていた。警察は、爆発物を所持していた容疑などで身柄を拘束された、トルコの偽造パスポートを持つ男がこの実行犯であると発表した。国家警察長官は事件の動機に「政治問題が絡む可能性は否定できない」と述べ、タイ経由で中国からの脱出をはかるウイグル族の密航を助けていたグループが、取り締まりを強めるタイ当局に報復したものとの見方を示している。
ウイグル族は中国の新疆ウイグル自治区など中央アジア周辺に暮らすトルコ系の少数民族で、中国からの分離・独立の動きを見せてきた。周辺区域に移住・進出してきた漢族との間で争いが絶えず、衝突による流血事件が繰り返され、中国当局は抑圧を強めてきた。こうした状況により中国から逃れるウイグル族が増え、タイはトルコなどに密航するための中継地となっていた。これまでタイ当局は、それらの人々をトルコに移送してきたが、これに不快を示す中国に迎合する形で、不法入国したウイグル族100人以上を7月に中国に強制送還している。

(金谷俊秀 ライター/2015年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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