日本大百科全書(ニッポニカ) 「バージェス動物群」の意味・わかりやすい解説
バージェス動物群
ばーじぇすどうぶつぐん
Burgess fauna
カナダのブリティッシュ・コロンビア州南部のステファン層中のバージェス頁岩(けつがん)の中にみいだされる特異な化石動物群。1909年にアメリカのC・D・ウォルコットにより発見された。古生代カンブリア紀中期のものであることが、産出する三葉虫によってわかるが、この層の化石は軟体部や付属肢の細部までが保存されている。当時の藻礁の急斜面下でおこった懸濁流の堆積(たいせき)物で、海底地すべりによって運ばれた動物が、無酸素の状況下で急速に埋積し腐敗を免れたものと思われる。この地層からは、海綿動物から原索動物まで多岐にわたる化石動物が発見され、100を超す属、150近い種が記録されている。そのうち三葉虫の22属がもっとも多いが、それと同じ22属の所属不明の節足動物がみつかっている。まことに奇妙な形態のものが多く、現生にその類縁がみつからない。さらに現在の動物界にはまったく近似したものがなく、分類上の位置さえ決められないものが17属と続く。このような特異な化石動物相は、動物界に爆発的な分化がおこった際に出現したが、結局子孫を残せないで消滅してしまったものと考えられ、進化の研究に貴重な化石群といわれる。その後これに類似した動物群がバージェス頁岩以外にも中国などで発見されるようになった。
[藤山家徳]
『スティーヴン・ジェイ・グールド著、渡辺政隆訳『ワンダフル・ライフ――バージェス頁岩と生物進化の物語』(1993・早川書房)』▽『荒俣宏編『このすばらしき生きものたち――カンブリア大爆発から人工生命の世紀へ』(1994・角川書店)』▽『サイモン・コンウェイ・モリス著、松井孝典監訳『シリーズ「生命の歴史」1 カンブリア紀の怪物たち――進化はなぜ大爆発したか』(講談社現代新書)』