パイロット・プラント(読み)ぱいろっとぷらんと(英語表記)pilot plant

翻訳|pilot plant

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パイロット・プラント」の意味・わかりやすい解説

パイロット・プラント
ぱいろっとぷらんと
pilot plant

工場における装置等の実稼働を達成するための試作的役割を果たす施設。石油化学工業、エネルギー関連施設等の場合、既存工程改良、新製法、新製品等に関して、理論的に、また、小規模ベンチスケールの実験装置により当該研究開発の工業化に見通しがたっても、即生産可能となるわけではない。生産の実現やプラントの大規模化は、予期せぬトラブルを引き起こすことがある。そして、生産の実現を目ざしての現実的総合的検討は、素材の再検討、装置の設計変更等を伴うことが少なくない。そこで、大規模化と装置の材質原材料質量の変化、不純物副産物等についてのデータを入手し、安全性への配慮、操作条件の変化と生産高諸経費との関連についての把握を試み、最適な設計、試作を再確認して実稼働を達成することが必要となる。こうした工業化の実現過程で、安全性、効率性、経済性を検討するため、データ収集用のパイロット・プラントが建設されている。他方では、パイロット・プラントの建設をせず、IT機器等を活用して工業化を推進する領域が広がっている。

[大西勝明]

 化学的・物理的現象の多くは、その現象を取り扱う規模の大きさによって影響を受けることが少なくない。したがって、これらの現象を取り扱う化学装置などの設計にあたっては、規模の影響を考慮する必要があり、規模の拡大縮小を画一的に取り扱うことのできる原則をみいだすことがたいせつである。この規模の影響を示す因子をスケールアップ因子とよんでいる。

 化学装置などの開発や設計にあたって、基礎的・研究的知見は、実験室規模の小形装置で得られるのが普通であり、スケールアップ因子に対する知見も不十分であることが多い。そのため、一気に大形の実用装置を製作使用することにはリスクが大きい。そこで、パイロット・プラントを用いて、スケールアップ因子の影響を確認したうえで、実用装置の設計製作を行う。修正が必要となった場合も、この段階でパイロット・プラントを用いて、結果を十分確認することができる。

[河村祐治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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