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パスツール効果 パスツールこうかPasteur effect

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

パスツール効果
パスツールこうか
Pasteur effect

酵母を好気的条件に移すとアルコール生産とグルコース消費が激減する現象。パスツールが見出したのでこの名がある。アルコール発酵は広く利用されているが,酵母にとっては嫌気的条件におけるアデノシン三リン酸 ATP生産の手段にすぎず,効率が低いのが欠点となっている (1分子のグルコースから2分子の ATPしかできない) 。一方,好気的代謝ははるかに高能率で1分子のグルコースから 38分子の ATPを合成できる。そこで,酵母は好気的条件ではアルコール発酵を行わずにすみ,必要量の ATPを少量グルコースから得ることができるのでこの現象が起きる。生化学的な説明では,解糖 (グルコース→2ATP+2ピルビン酸) によってできるピルビン酸の代謝が好気的なクエン酸回路に切替わると ATP,NADHが急速に増加し,AMP,NAD+ が減少する。解糖系,クエン酸回路の律速酵素は,この変化で活性が低下し (これをフィードバック調節という) ,解糖とクエン酸回路の活性が低下するためと考えられている。

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デジタル大辞泉の解説

パスツール‐こうか〔‐カウクワ〕【パスツール効果】

細胞や微生物による解糖発酵が、酸素によって抑制される現象。酸素濃度が十分であると、好気的な条件でATPを消費するほうが大きなエネルギーが得られるためと考えられている。パスツールが発見。

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栄養・生化学辞典の解説

パスツール効果

 好気条件下では,ATPの生産の効率がよいため,一見グルコースなどのエネルギー源の消費が少ないようにみえる現象.もともと酵母の発酵についていわれたが,現在は動物についても使われる.

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

パスツール効果
ぱすつーるこうか

細胞や組織による解糖が酸素によって抑制される現象。酵母のアルコール発酵と酸素分圧の関連を調べていたパスツールにより発見されたのが名の由来である。この現象は、高等動物細胞はじめ多くの細胞でみられる。嫌気条件下では細胞は解糖によって糖を乳酸やアルコールに変え、その過程でエネルギーを獲得するが、酸素存在下では糖はTCA回路を経て完全酸化される。完全酸化により得られるエネルギー、すなわちアデノシン三リン酸(ATP)は解糖の場合よりはるかに大きいので、好気条件下では嫌気条件下より少量の糖消費ですむ。パスツール効果の機構については、呼吸により増加したATPやクエン酸が、解糖系の調節酵素であるフルクトース六リン酸キナーゼを阻害するので解糖が抑制されるという考え方が有力である。[嶋田 拓]

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