セリ科(APG分類:セリ科)の二年草。ヨーロッパ南東部からアフリカ北岸一帯の砂礫(されき)地の原産。紀元前4~前3世紀のギリシアで記録があり、栽培は古く、ギリシア・ローマ時代は薬用、香味料であったが、紀元後2~3世紀から野菜としても使われるようになった。9世紀にイタリアからフランスに、13世紀に北ヨーロッパに伝わり、16世紀にはイギリスへと広まった。アメリカには19世紀初めに伝わった。日本へは江戸時代にオランダ人が初めて伝え、オランダゼリの和名がついたが、本格的導入は明治初年以降で、初めは洋食の飾りとして使われ、つま以外に料理用として食べられるようになったのは第二次世界大戦以降である。
全草無毛で特有の香りがある。葉は3出羽状複葉で濃緑色を呈する(葉の形態については「複葉」の項を参照)。春または秋に苗床に種子を播(ま)き、定植後、秋または春に出る根出葉を順次かき取り、数回にわたって収穫する。種子を播いて2年目から茎が伸びて50センチメートルほどになり、黄緑色の小花を開く。寒さに強く、土質も選ばないので家庭菜園やベランダ園芸でも栽培される。経済栽培としては、千葉・長野・静岡県などに多い。縮み葉系と丸葉系があり、料理用には縮みのない柔らかい葉の品種が適しているが、日本では緑色の濃い、縮み葉のものが好まれる。
[星川清親 2021年12月14日]
葉茎に爽快(そうかい)な芳香と、ややくせのある味があり、ヨーロッパでは古くから香味野菜として用いられてきた。なまのパセリは肉料理の付け合せに彩りとして添えられるが、口臭を柔らげる働きがあるので食事の最後に食べるのもよい。刻みパセリは料理にふりかけたり調理に用いて風味を引き立てる。スープ、サラダ、魚料理、肉料理、ソースに香味料として使われる。乾燥したパセリフレークはほとんどの料理にふりかけてよい。カルシウム、リン、鉄、カリウム、カロチン、ビタミンCなどを多く含んでいる。
[齋藤 浩 2021年12月14日]
古代ギリシアで開かれていた四大祭典競技のうち、ゼウスを祭るネメア競技と海神ポセイドンを祭るイストミア競技では、勝利者をパセリやセロリの冠でたたえた。パセリの花言葉の勝利、祝宴、祝日はそれにちなむ。一方、冥界(めいかい)の女王ペルセフォネに捧(ささ)げたことから葬祭にも使われ、ひいては不吉とする見方も古代ギリシアにあった。薬用にもなり、ディオスコリデスは『薬物誌』(1世紀)で、種子や根には利尿作用があり、胃病にも効くと記述した。パセリは縮れた葉が特徴だが、すでにギリシアのテオフラストスが紀元前4世紀にそれに触れている。
日本では貝原益軒がオランダゼリの名で江戸時代に記録しているが、普及したのは明治後半以降で、とんかつを考案した銀座「煉瓦亭(れんがてい)」の木田元次郎(きだもとじろう)がとんかつに添えたのが影響している。一方、このために、欧米では刻んでスープに入れる利用が多いのに、日本では生食や飾りが主流となった。
[湯浅浩史 2021年12月14日]
葉を食用とするセリ科の二年草または多年草。オランダゼリともいう。原産は地中海沿岸とされるが,世界各地で野生化している。根生する葉は有柄の3出複葉で,小葉身は深く2~3裂し,各片はやや立体的に配置される。春に高さ数十cmの茎を立て複散形状に多数の花をつける。花は黄色,蒴果(さくか)は卵形でいずれも小さい。北ヨーロッパへは13世紀,イギリスへは15世紀の中ごろに,アメリカへはヨーロッパから17世紀に導入され,現在では全世界に広く栽培されている。日本でも18世紀の初めにオランダゼリの名で記載があり,明治以後は西洋野菜として導入されている。大別して平葉種,ちりめん葉種,根用種があり,それぞれに品種が分化している。品質は葉が濃緑で,葉の刻みが小さくて多く,先端が内側に巻き,縮んでいるものがよいとされ,ちりめん葉種が最も広く栽培されている。根用種は北ヨーロッパで発達し,肥大した根を食用にする。短根と長根があり,利用法はニンジンと同じである。冷涼な気候を好み,土壌をあまり選ばない。一定の大きさになると低温で花芽分化し,高温で薹(とう)立ち,開花する。ビニルトンネル利用の暖地冬どり,普通地夏どり,高冷地夏どりの作型が定着し,周年出荷されている。栽培が容易なので家庭菜園にむく。また鉢植えにして葉を観賞したり利用することもできる。古代ギリシア・ローマ時代にはすでに香味料や毒消しとして用いられている。また全草にアピオールapiolを含有し,通経剤やマラリア特効薬のキニーネの代用にされる。
執筆者:高橋 文次郎
西洋料理の皿に彩りとして添えることが多いが,和風のものにもつまとして利用される。刻みパセリはオムレツやサラダに加え,全草をそのまま素揚げにしたり,てんぷらにしてもよい。
執筆者:橋本 寿子
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