パッチは、継ぎはぎ、寄せ集め、ピーシング(縫い合わせ)という意味である。また小布をモザイク風にはぎ合わせることをいう。
[木村鞠子]
最初は農民などが必要上、衣服に継ぎを当てたり、傷んだところを除いてはぎ合わせていたものだが、やがて農民芸術となり、しだいに装飾的な美しい作品がつくられるようになった。ヨーロッパでは17~19世紀にかけて、絹地や、つやのある木綿地などに、キリスト生誕や神話、物語を部分的にはめ込んだ壁掛け、ベッドカバーなどがつくられ、各地の博物館に多く残されている。アメリカン・パッチワークは、ヨーロッパからアメリカの新大陸に移住した人たちが持って行った、衣服やわずかな布地が傷んできたとき、それらをはぎ合わせて使ったことがもとになった実用性の強いものであり、これが発展していった手芸である。そのため、作品は18~19世紀のものが多く残されている。
布地は、木綿、麻、毛、絹、化合繊のプリント、縞(しま)、水玉、無地、チュール、レース。部分的に山型テープ、ブレードなどが使われる。
注意することは、縫い合わせるときに、できるだけ同質の布を選び、伸縮の度の違うものは避ける。また、薄い布や伸びやすい布には、裏側に薄い和紙で裏打ちをする場合もある。
図案としては、三角、四角、五角、六角、長方形、円、升形、菱(ひし)形などが基本になる。
[木村鞠子]
原則としては、ランニングステッチ(細かいぐし縫い)、まつりはぎの2種類がある。そのほか、布地によって、クロスステッチ、クロスドヘリンボーン、ブランケットステッチ、デージーステッチなど。また、はぎ目にテープ、ブレード、レースなどを使うこともある。
用途としては、室内装飾品、衣服、小物類、袋物など。
[木村鞠子]
つぎはぎ細工,寄せ集め物の意味で,素材,色,柄,形,大きさなど異なる布類を手縫いやミシンではぎ合わせる手芸の技法。すでに前9世紀ごろのエジプトでは動物の皮をはぎ合わせた天幕,アップリケを併用した女王の葬儀用天幕などがあった。ヨーロッパへは,11世紀ごろサラセン人の技術が十字軍によって伝えられ,壁掛けやテーブルクロスなどに使われた。18世紀にはアメリカの開拓者が耐乏生活の中でありあわせの布をはぎ合わせてパッチワークし,別布と合わせてキルティングにしたベッドカバーなど生活必需品を作った。また女性たちは集まっておしゃべりをしながら作品を作るキルティング・パーティを開いた。結婚祝のウェディング・キルト,別離の記念に各自が1ブロックずつ持ち寄ってつなぎ合わせるフレンドシップ・キルト,男子の成人祝のフリータイム・キルトなどが作られた。はぎ合せの形式は,初期に行われた不揃いの形や素材の布をはぎ合わせるクレージー・パッチワーク,一定の形,色,素材の布を組み合わせるピース・パッチワーク,モザイク・パッチワーク,正方形の土台布にリボンや細い布を縫いつけ,それらをはぎ合わせるログキャビン・パッチワークなど多くのパターンに固有の名称がついている。なお日本でも同様の手法と思われる切継ぎが,室町~江戸時代の小袖や農民の仕事着に行われている。
執筆者:原 三江子
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