ビアード(Charles Austin Beard)(読み)びあーど(英語表記)Charles Austin Beard

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ビアード(Charles Austin Beard)
びあーど
Charles Austin Beard
(1874―1948)

アメリカ史研究の革新主義学派の代表的な歴史家。インディアナ州に生まれる。デポー大学卒業後オックスフォード大学に留学し、帰国してコロンビア大学博士号を取得した。1917年までコロンビア大学で歴史および政治学を講義したが、第一次世界大戦中の同年コロンビア大学が平和主義者の教授陣を解職したのに抗議して辞職した。翌年社会調査のための新大学設立に参画するとともに、公務員研修学校長となり、ニューヨーク市の市政調査にも参加した。1922年(大正11)および関東大震災後の翌23年の二度にわたって来日し、東京の市政調査や震災復興計画に協力した。26年にアメリカ政治学会会長に就任し、33年にはアメリカ歴史学会会長を務めた。

 学問的にはきわめて多産な研究活動を行い生涯34冊の著作を著したが、現実の政治問題に対しても鋭い政治感覚を有していた。彼が歴史家としての名声を獲得するに至ったのは、1913年に『合衆国憲法の一経済的解釈』を発表したことによってである。この本で彼は、合衆国憲法の制定を推進した「建国の父祖たち」の経済的利害を解明して、アメリカ史における経済的利害の働きの重要性を指摘したが、マクレーカーズとよばれるジャーナリストが種々な社会問題の存在を白日の下にさらし改革運動が進められていた革新主義の時代にあって、彼の見解は、それまで神聖視されてきた合衆国憲法および「建国の父祖たち」を汚すものと受け取られ、学界賛否両論の大きな波紋を投げかけたのであった。

 経済的利害を重視する観点から、ほかに『ジェファソン民主主義の経済的起源』(1915)や『政治の経済的基礎』(1922)などを著したが、しだいに観念の働きにも関心を抱くに至った。最後の著作『ルーズベルトと第二次世界大戦』(1947)では、参戦するために日本の真珠湾攻撃を誘発したとしてルーズベルト大統領の開戦決定を厳しく批判している。

五十嵐武士

『斎藤眞解説、池本幸三訳『C・A・ビアード』(1974・研究社出版)』『松本重治・岸村金次郎・本間長世訳『アメリカ合衆国史』(1964・岩波書店)』『斎藤眞・有賀貞訳編『アメリカ政党史』(1968・東京大学出版会)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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