フランス・ルネサンスの人文学者。法律を学び狩猟に興ずる青春を過ごすうち翻然と古代研究に己の道を見いだし,辛苦の末に当時学ぶべき師も見いだせなかった古代ギリシア語を習得し,ついにはエラスムスと並び称される人文主義の指導者となった。《ユスティニアヌス法令集注解》2巻(1508-26)は,ローマ法研究に初めて歴史学的・言語学的方法を適用した革命的業績であり,《古代貨幣考》(1515)もまた古代社会経済史の根底に実証的な検証を加えた大著である。こうした研究の基盤となった彼のギリシア語関係の造詣は《ギリシア語考》(1529)に集成され,永く後世を裨益した。また王立図書寮初代寮長として古代語写本の収集に努め,フランソア1世の側近として王権の文化政策に影響を与え,コレージュ・ド・フランスの前身にあたる王立教授団Lecteurs royauxの創設(1530)に尽力するなど,フランス・ルネサンスの父としての役割を果たした。
執筆者:二宮 敬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
フランスの人文学者(ユマニスト)。パリに生まれる。法律とギリシア語を研究し、その学識はエラスムスと並び称される。初めて歴史的・言語学的方法を適用してローマ法研究を一新した『ユスティニアヌス法令集注解』Annotationes in Pandectas2巻(1508~1526)、『古代貨幣考』De Asse(1515)、『ギリシア語考』Commentarii linguae graecae(ラテン語)(1529)の大著がある。またフランソア1世の側近として、コレージュ・ド・フランスCollège de Franceの前身である王立教授団を実現(1529)させ、フランス・ユマニストの父と仰がれる。
[髙橋由美子 2015年6月17日]
『『ある古典学者の話――ギヨーム・ビュデの場合』(『渡辺一夫著作集4』所収・1971/増補版・1977・筑摩書房)』
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