精選版 日本国語大辞典 「ファインケミカル」の意味・読み・例文・類語
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ファイン・ケミカルとは,化学工業製品のなかでも固有の技術に裏づけられた,より加工度が高く,したがって付加価値の高い製品のことで,精密化学製品ともいわれる。具体的には医薬品,農薬,合成染料,有機顔料,塗料,香料,化粧品,接着剤,写真感光材料,セッケン,合成洗剤,界面活性剤,環式中間物などを指す。またこの分野を研究・開発する化学をファイン・ケミストリーfine chemistryという。ファイン・ケミカルの特徴としては,その製品の市場規模が1品目当り数億円から300億円程度と大きくないため,新規参入があると供給過剰が発生しやすいこと,また品種が多く,かつその一つ一つで製法が異なることである。またエンジニアリングプラスチック(エンプラ)をみても,使用原料のポリマーは同一でも需要分野,使用個所ごとに添加剤や製法が異なる。このため品種を変えるたびに製造工程の変更が必要となる。
日本のファイン・ケミカル工業の規模は出荷額で12兆7160億円で,化学工業全体(23兆3625億円)の約54%を占めている。しかも付加価値が高い分野が多いためほぼ一貫して増えつづけ,特に医薬品,化粧品にその傾向が強い(1995,《工業統計表》)。ファイン・ケミカル化が進む背景としては,とくに1950年代以降の日本の化学工業の成長を支えた石油化学工業の原料のエチレンに代表されるように,汎用量産化学品の需要が伸び悩んでいることがある。しかしファイン・ケミカルの成長のためには,多品種少量生産という特徴から,新規市場の開拓および生産性向上のための効率的製造システム,それに輸送の効率化・在庫の適正化のための流通システムを確立する必要がある。
執筆者:木村 栄宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
医薬品などの付加価値の高い化学物質.原料・材料として大量に使われる化学薬品と区別するときに使う.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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