紀元前2000年紀の末葉からローマ時代に至るまで、レバント(南シリアからパレスチナに至る沿岸地帯)を本拠に、地中海世界で通商や植民で活躍したフェニキア人の言語。北西セム語に属するカナーン語の一派で、ヘブライ語ともっとも近い。現存するのは碑文資料だけで、最古のものは前1000年ごろ、最新のものは前1世紀に属する。文学作品はギリシア・ローマの著作家による言及があるけれども、すべて隠滅した。
フェニキア人による北アフリカの植民都市カルタゴを中心に西方に広がったフェニキア語は、本土のそれと区別してポエニ語Punicとよばれる。カルタゴのほかに、シチリア島、サルデーニャ島、南フランス、スペイン、遠くはブリテン島から出土した、年代も前9世紀から紀元後の世紀に至る、数千の碑文資料が残存する。ほかに、ローマの喜劇作者プラウトゥスの作品中に、ラテン文字で綴(つづ)られ、ラテン語の翻訳がついたポエニ語の台詞(せりふ)がある。
[松本克己]
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…このほかモアブ語Moabite(死海東部のモアブの王メシャが前9世紀に建てた,300語あまりから成る戦勝記念碑の言語。ヘブライ語に非常に近い),地中海岸のフェニキア語Phoenician(前10~後2世紀),および最も多くの文書を有するヘブライ語もカナン語に属する。一方,アラム語は,前2千年紀にティグリス・ユーフラテス上流地方からしだいに南下し,前6~前1世紀にはペルシア帝国の公用語としてその広大な版図に足跡を印し,紀元後もユダヤ教徒,キリスト教徒,マンダ教徒らによって用いられ,現代でも二,三の小部落で話されている。…
※「フェニキア語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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