フェニックス(読み)ふぇにっくす(英語表記)phoenix

翻訳|phoenix

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

フェニックス(ヤシ科)
ふぇにっくす
phoenixdate palm
[学]Phoenix

ヤシ科ナツメヤシ亜科ナツメヤシ属の総称。属名は、ギリシア語であるphoenixに由来する。Phoenixは不死鳥、鳳凰(ほうおう)の意味もある。カナリア島、イラン、イラク、アラビア、インド、ヒマラヤ、ネパール、スリランカ、マダガスカル、台湾などに14種10変種以上が分布する。幹は単一のものあるいは株立ちのものなど各種あり、高低もさまざまである。幹には葉柄基と繊維網が長く固着し、徐々に脱落し、幹肌に波状の環紋または角(つの)状の突起が残る。葉は光沢のある緑色または半光沢の灰色、披針(ひしん)形で全裂する。小葉羽片は内向きのV字状で、本属とクジャクヤシ属だけにみられる特殊な羽状葉である。羽片は葉の基部近くでは鋭い刺(とげ)となる。葉柄は光沢または半光沢で、緑色または灰色。雌雄異株であるが、まれに同一花柄に雌雄両花がつくものがある。肉穂花序は毛がなく木質で、仏炎包は先がとがった杓子(しゃくし)状である。花柄は長く、両側に竜骨状のひだがある。花柄は主柄のところどころに数本ずつ横列状に集束し、小さく波打った直伸状の花軸を多数分枝する。雄花は、花弁は3枚で黄白色。雄しべは6本で、大部分が長大な葯(やく)からなり、花弁内に包まれた多肉性の環状膜の上縁に直立して着生する。花糸は短く、消失に等しい。雄花にはまた未発達の子房や不稔(ふねん)の雌しべがある。雌花は枝柄の先半部に房状につき、花弁3枚が球状に子房を包み、柱頭は頂部で舌状に3裂し、外方に反曲する。普通は6本の無葯の雄しべがある(サトウナツメヤシは3~4本)。果実は単一で光沢のある楕円(だえん)形、果面は黄、橙(だいだい)、朱、紫、黄色などを帯びる。種子は片側の腹部に、上下に全通した縦溝がある。胚(はい)は普通は溝の反対側中央にある。
 外形がソテツに似ているが、ソテツは別科であるソテツ科Cycaseaeの植物である。
 よく知られるものに次の各種がある。なお、「サトウナツメヤシ」date sugar palm/P. syluestris Roxb.および「ナツメヤシ」P. dactylifera L.は、それぞれの項参照。
 カナリーヤシCanary date palm/P. canariensis Chabaud 本属中ではもっとも大形の種である。種名はカナリア島産の意味。幹は単一で直立し、高さ20メートル、径0.8~1メートル。幹肌に、大きい葉柄基部が長期間固着して徐々に脱落してできた、交錯した規則正しい波状紋が残る。葉は羽状葉で、150~200対の小葉からなり、長さ5~7メートル。約200が密生して葉冠をつくる。小葉は披針形で、光沢のある濃緑色。長さ45~55センチメートル、幅3~3.5センチメートルで、対生、互生、並列、やや上下に交錯するなどさまざまである。小葉柄は短く、小葉の末端は強い刺となる。仏炎包は長さ1~1.5メートルの花柄につき、革質、黄色で、長さ75センチメートル、幅11センチメートル。果実は濃黄色、楕円形で長さ1.8~2センチメートル、径1.2センチメートル。種子は茶褐色、楕円形で長さ1.7センチメートル。街路樹、庭園樹とするほか、ごく小形のものは室内で鉢植えにする。
 ソテツジュロminor date palm/P. humilis Roxb. var. hanceana Becc. 台湾原産。幹は単一で、高さ3メートル、径20~25センチメートルと小形である。幹肌には角状の突起が残る。小葉は硬直状披針形で、40~50対が葉軸に対し斜め上下に交錯して密生する。長さ30~45センチメートルで、葉柄下部の末端は鋭い刺となる。肉穂花序は小さく、黄白色。果実は紫黒色で長さ1.3センチメートル、径0.8センチメートル。庭園樹とし、栽培最低温度は零下2℃。
 セネガルヤシSenegal date palm/P. reclinata Jacq. 種名は葉が下に曲がるという意味。アフリカ原産。幹は細長く、分げつして叢生(そうせい)する。高さ8~12メートル、径25~30センチメートルであるが、幹を単一にして育てるとより高くなる。葉柄基はとれやすく、幹肌の残痕(ざんこん)がココヤシのそれに似ている。羽状葉は光沢のある鮮緑色で、湾曲して下垂し、長さ5~6メートル。小葉は葉並びがよく、長さ30センチメートル。仏炎包は濃橙(のうとう)色で長さ70センチメートル。肉穂花序も濃橙色で長さ1メートル。果実は赤ないし赤褐色で楕円形、長さ1.3センチメートル、幅0.7センチメートル。庭園樹に好適で、栽培最低温度は2℃。
 シンノウヤシpigmy date palm/P. roebelenii O'Brien インドシナ半島、ミャンマー、インド(アッサム)原産。幹は単一で、直立性または波立性である。高さ2~3メートル、径10~20センチメートル、幹肌は滑らかで、角状の突起様を呈する葉痕が規則正しく整列する。羽状葉は柔らかく、湾曲して下垂し、長さ1~2メートル。小葉羽片は40~50対あり、光沢のある緑色で長さ20~30センチメートル、幅1センチメートルと細長く、細片が湾曲した毛状にみえる。羽片の裏面の中央脈と両縁には白色の点繊(繊維質の白色斑点)がある。肉穂花序は淡黄緑色で長さ30センチメートル。花は黄白色で芳香があり、雄花は長さ6ミリメートル。果実は黒色、長楕円形で長さ1~1.3センチメートル、径5~6ミリメートル。種子は楕円形で長さ7ミリメートル。室内用としては、本属中ではもっとも広く用いられる種類である。
 イワナツメヤシanderson date palm/P. rupicola Anders. 種名は岩石生の意味。ネパール、インド北部原産。幹は単一で直立し、高さ5~8メートル。幹肌に波状紋を呈する葉痕が浅く残る。交雑種が多く、大小多様であるが、気品のある樹形を示す。葉は長さ3メートル、湾曲して下垂し、姿態が優美である。葉並びもよく整い、小葉羽片は互生または対生し、柔らかく、長さ50センチメートル。葉柄は短い。肉穂花序は長さ30センチメートル。果実は黄色、楕円形で長さ1.5センチメートル、幅0.8センチメートル。栽培最低温度は零下2℃。[佐竹利彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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