改訂新版 世界大百科事典 「フェニルヒドラジン」の意味・わかりやすい解説
フェニルヒドラジン
phenylhydrazine
ヒドラジンH2NNH2のフェニル置換体。融点19.6℃,沸点243℃,101.6℃/5mmHg。沸点付近で分解が起こるので減圧蒸留によって精製する。無色の板状晶または液体。かすかに芳香臭があり,ほとんどの有機溶媒に可溶。水にはほとんど溶けない。空気,光に不安定で,徐々に黄色から暗赤色に変化する。保存には光,空気を遮断する。有毒なので注意を要する。
アニリンを亜硝酸ナトリウムと塩酸で処理し,生成するベンゼンジアゾニウム塩を亜硫酸で還元して合成する。塩基性で,種々の酸と塩をつくる。ヒドラジンと同様ケトン,アルデヒドと反応し,難溶性のフェニルヒドラゾンを生じ,希薄溶液でも濁りが認められるので,糖質化合物,ケトン,アルデヒドの分離,確認の試薬として用いられる。
またアンチピリンの原料とされる。
執筆者:奈良坂 紘一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報