フードバンク(読み)ふーどばんく(英語表記)food bank

翻訳|food bank

デジタル大辞泉 「フードバンク」の意味・読み・例文・類語

フード‐バンク(food bank)

食品を取り扱う企業から、製造・流通過程などで出る余剰食品や規格外商品、販売店舗で売れ残った賞味期限消費期限内の商品など、安全上は問題がなくても廃棄される食品の寄付を受け、無償で必要な人や団体に提供するボランティア活動。また、それを行う団体。一般家庭で余った賞味期限内の食品も対象となる。福祉団体・生活弱者支援のボランティア活動として1960年代に米国で始まり、日本でも平成12年(2000)頃から行われている。食糧銀行

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共同通信ニュース用語解説 「フードバンク」の解説

フードバンク

包装破損や印字ミスがある、賞味期限が近いなどで、主に企業から販売しない食品を寄付してもらい、福祉施設子ども食堂、困窮世帯に無償で提供する活動。食品ロス削減子どもの貧困対策として注目されている。家庭で余っている食品を職場や学校に持ち寄って寄付する「フードドライブ」も広がる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フードバンク」の意味・わかりやすい解説

フードバンク
ふーどばんく
food bank

品質上の問題はないにもかかわらず規格外であることや、商品の入替えなどを理由に廃棄されている食品を引き取り、生活困窮者や福祉施設などへ無償で提供する活動、およびそうした活動を実施している団体。食品メーカーや流通・小売業者から寄付された余剰食品を一時的にストックし、必要なところへ配分することから、食品の銀行(フードバンク)とよばれる。

 農林水産省の推計によると、2015年度(平成27)において、日本で1年間に発生する食品由来の廃棄物約2842万トンのうち、食べられるにもかかわらず廃棄されている食品ロスは、年間約646万トン(事業系357万トンと家庭系289万トンの合計)で減少傾向にはあるものの、2021年度(令和3)においても年間523万トン(事業系279万トン、家庭系244万トン)に上る。これらには品質とは関係がない、ラベルの印字ミスやパッケージの汚れ、賞味期限が近い食品などが含まれる。こうしたなか、まずは小売業などの発生元で食品ロスの抑制に努めつつ、そのうえでなお生じた廃棄物についても、なるべく有効利用する取組みの一環として、フードバンク活動が注目されている。農林水産省では食品の品質確保や衛生管理などに関する手引書を作成し、食品ロスを削減する手段としてフードバンク活動を支援している。また、2015年4月に始まった生活困窮者自立支援制度では、生活に困った人が相談できる窓口の設置が地方公共団体に義務づけられ、これをきっかけにフードバンクと地方公共団体が連携し、食糧を支援する活動が全国的に広がった。フードバンク団体は2014年には全国で39団体であったが、2023年9月時点では252団体に拡大している。

 フードバンクの活動を1967年から行っているアメリカでは、食品メーカーや流通・小売業者から提供された食品だけでは食事の栄養が偏るため、肉や牛乳などを別に購入・配布し、食品ロスの削減と食糧支援を両立させた活動を展開している。食べ物に困った人がだれでも食品提供を受けられる場所が数多くつくられており、全米で約1300(2018)のフードバンク団体が、各地域の協会や、チャリティフードパントリー(食品の無料配布を個人に向けて行う活動)などと連携し食品を配布している。ヨーロッパでは、最初のフードバンクが1984年にフランスにおいて設立され、1994年にはイギリスでもフードバンクの活動が始まった。

 日本では2002年に国内初のフードバンク団体が設立された。その後、2015年11月に全国各地で活動を展開する団体によって全国フードバンク推進協議会(本部事務所は東京都豊島(としま)区池袋)が設立された。2024年1月時点では59団体が参加しており、共通のガイドラインに署名し、流通や食品衛生に関する情報共有を進める一方、資金面や人材養成に関し行政や地方公共団体への働きかけなどを行っている。

[編集部 2024年3月19日]

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知恵蔵 「フードバンク」の解説

フードバンク

パッケージ不良や形状が規格外であるなどの理由で、品質には問題がないのに売り物にならなかった食品を集め、食事に困っている人やホームレスなどに配布していく活動。市場に流通させることができない余剰食品を蓄え分配することから「フードバンク(食べ物の銀行)」と呼ばれる。アメリカではおよそ50年前から始まっており、日本でも注目を浴び始めている。
具体的には、ボランティア団体やNPOが、食品メーカーなどから余剰食品を無償で譲り受け、ホームレス支援団体や生活支援施設に配る。東京を皮切りに、兵庫、広島、沖縄などへと活動の輪が広がっている。
日本は、先進国の中で最低レベルの食料自給率(40%)であるにもかかわらず、食べずに捨てられる食品が大量発生している飽食国家。農林水産省によると、企業や家庭から出る食品廃棄量は年間約1900万トン(2005年度)にものぼり、うち食べられるのに捨てられている食品ロス量は500万~900万トンにもなるという。このような背景から、フードバンク活動は「もったいない」という世論の後押しを受け、今後もっと大きなうねりとなるとともに、社会的弱者の命を支える重要な取り組みとなりそうだ。
フードバンクは、食に困る人々だけでなく、余剰食品を出す食品関連企業にとってもメリットがある。企業側にとって、余剰食品を処分するときに生じる廃棄コストは悩みの種であり、「せっかく製造したものを捨てるのはしのびない」という社員の声も開発への士気を下げる要因になりかねない。フードバンクに参画する食品関連企業は、これらの課題が解決できるなら、と歓迎姿勢を示すところが多い。
2008年末現在、日本でフードバンクとして活躍している団体は、セカンドハーベスト・ジャパン(東京)、フードバンク関西(兵庫)、あいあいねっと(広島)など。草分け的存在であるセカンドハーベスト・ジャパン(2HJ)では、40社以上の食品関連企業から食べ物の提供を受けている。また、企業だけでなく、一般家庭で余った食品を学校や職場などに持ち寄り、慈善団体やフードバンクに寄付する「フードドライブ」という活動も広まってきている。

(高野朋美 フリーライター / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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