フーフェ(その他表記)Hufe

改訂新版 世界大百科事典 「フーフェ」の意味・わかりやすい解説

フーフェ
Hufe

ヨーロッパの中世村落で共同体を構成する標準農民の保有地とそれに付属する諸権利の総体。ドイツ語で〈持分〉の意。共同体農民は,(1)屋敷と庭畑,(2)開放耕地の各耕区内の一つ以上の地条,を保有するほか,(3)耕地持分に比例した共同地(アルメンデ--森林,放牧地,採草地など)の用益権,を有する。この三者を総称してドイツでフーフェと呼び,フランスマンスmanse,イギリスハイドhideに相当する。この3要素の総体を分割できぬ農地単位としてラテン語でマンススmansusと呼ぶ例は7世紀に始まる。しかし農民の一家族を維持するに足る標準的な土地保有単位という観念は,おそらく古くから存在し,7,8世紀以降成立の途上にあった領主制が上からそれをとらえて制度化したものと思われる。カロリング時代にマンススは徴兵割当ての基準にもなった。耕地持分は地域差が著しいが,ドイツにおける標準フーフェは30モルゲン(10~12ha)。奴隷フーフェは自由人フーフェに比べて小規模で賦役の負担が重いが,保有者の出生身分に基づくフーフェの分類はしだいに消滅する。完全フーフェだけでなく1/2,1/4など分割フーフェの保有農も共同体に所属するが,フーフェを持たぬ小屋住農Kötter,Selanerらは村居住者にすぎない。フランスでは9世紀以降パリ盆地を皮切りにマンスの分裂解体が進むが,イギリスのハイドは12,13世紀まで,ドイツのフーフェは15,16世紀まで維持され,前者では国王後者では領邦君主公租を賦課する課税単位になった。
 →領主制
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フーフェ」の意味・わかりやすい解説

フーフェ
Hufe

ヨーロッパ封建社会における村落共同体農民が,家族の生活維持のために享受した諸権利の総称。古ドイツ語に由来する「持ち分」の意味。その内容は,家屋宅地と村落内耕地の各耕区における所定地条 (耕地) の個別利用,および共有地利用権の3つから成る。1家族の最低生存条件と考えられる標準耕地面積は 30モルゲン (10~12ha) で,この耕地を保有し,宅地,共有地利用権を所有して共同体を構成する農民が「完全フーフェ農民」と呼ばれた。フーフェをもたない「小屋住み農民」 (→コターズ ) は村落共同体員の資格はなかった。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「フーフェ」の解説

フーフェ
Hufe

古ドイツ語のホーバ(受けとる,所有する)にあたる語。狭義には村落共同体員の持つ家屋と庭をさし,広義には共同体構成農民の権利の総体(私有財としての家屋と宅地,割替地の地条への個別利用権,共有地利用への参加権)をいう。面積単位としての内容もあり,標準フーフェは30モルゲン(=10~12ha)で,その2分の1,4分の1,8分の1に細分化される。共同体農民の「持ち分」としてその生存の物的条件の総体をなすものである。

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世界大百科事典(旧版)内のフーフェの言及

【領主制】より

…その根幹をなすのは,奴隷的非自由人の地位の向上であり,家,屋敷地,一定面積の耕地,森林・荒蕪地への一定の用益権を含んだ保有地が,1家族の生活に必要な単位として確保される傾向が現れてくる。これが7世紀にパリ地方の王領地で生まれたマンスmansusで,ゲルマン語圏ではフーフェとして広がっていく。同時に,国王,教会,高級貴族などの有力領主のもとでは,開墾(開拓)によって従来の小所領の耕地を増加させるとともに,土地購買や寄進受納によって,所領規模を拡大する動きが目だったが,それは同時に,独立農民が,領主制の支配下に引き入れられ,しだいにマンス=フーフェ保有農民となっていく過程でもあった。…

※「フーフェ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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