日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブドウ糖」の意味・わかりやすい解説
ブドウ糖
ぶどうとう
ドイツ語Traubenzukkerの意訳で、D-グルコースD-glucoseのこと。デキストロースdextroseともいう。化学的にはα(アルファ)-D-グルコピラノースとβ(ベータ)-D-グルコピラノースの混合物。日本薬局方に収載されている品目で、カロリーの補給のほか、高張液(体液の浸透圧の高い液で、細胞から水を奪って細胞の体積を減少させる)は利尿剤として用いられる。三大栄養素のうちの炭水化物は、生体内でブドウ糖となってこれがエネルギー源として生命を維持しているわけで、ブドウ糖は代謝されやすく、注射剤として非経口的に栄養補給のために繁用されている。10~50%の高張のブドウ糖注射液は高カロリー輸液ばかりでなく、浸透圧性利尿剤としても用いられる。白色の結晶または結晶性粉末で、においはなく、甘味がある。水にきわめて溶けやすい。5%溶液は等張で、注射液として粉末注射剤の溶解用に使われたり、他の注射剤と混合して点滴静注(点滴注射)される。また、ドライシロップなど各種製剤の賦形薬(形を整えるために添加する薬剤)として用いられる。
[幸保文治]
人体との関係
デンプンをα-アミラーゼで液化後、グルコアミラーゼで糖化して工業的に製造され、主として甘味料の原料とする。小腸で能動輸送により吸収される。人間の血中を流れている主要な糖(血糖)である。
[不破英次]
『大西正健著『生命にとって糖とは何か――生命のカギ・糖鎖の謎をさぐる』(1992・講談社)』▽『島健二編『血糖値をみる・考える』(2000・南江堂)』▽『丸山工作著『生化学をつくった人々』(2001・裳華房)』