日本大百科全書(ニッポニカ)「甘味料」の解説
甘味料
かんみりょう
味覚に対して甘味を感じさせる調味料および食品添加物の総称。天然甘味料と人工甘味料がある。
天然甘味料としては砂糖、蜂蜜(はちみつ)が代表的であるが、このほか、ブドウ糖、果糖、飴(あめ)(麦芽糖)、飴の加工品であるマルチトール、乳糖、甘葛(あまずら)、甘茶、甘草(かんぞう)、甘草より抽出したグリチルリチン、ステビア(アマハステビア)から抽出したステビアシドなどがある。また、人工甘味料としてはタール系のサッカリンナトリウム、アミノ酸系のアスパルテーム、および非吸収性ソルビトールなどがある。また、天然素材からつくられる、むし歯をつくらない新しい人工甘味料キシリトールなども注目されている。
[河野友美・菅野道廣・山口米子]
天然甘味料
日本で歴史的にもっとも古くからあるのが甘葛および飴で、奈良時代にはかなり使用されていたようである。ただ甘葛は現存せず、アマチャヅルではないかといわれている。飴は麦芽から製造したもので、古くから甘味料として使用されてきた。穏やかな甘味で、主として水飴の形で使用される。現在も佃煮(つくだに)、菓子の甘味料として広く使用されている。また飴からは、粉末化した粉飴や、飴の主成分麦芽糖を水素処理し、ブドウ糖2分子からブドウ糖・ソルビトール各1分子の非消化性のマルチトールがつくられ、使用されている。甘茶も古くから使われてきた甘味料で、甘味成分はフィロズルチンである。これはサッカリンの2倍の甘味があり、くどい甘さなので、現在はあまり使用されていない。甘草も古くから使われてきた甘味料で、グリチルリチンを甘味成分とし、甘味は砂糖の約200倍である。サッカリンナトリウムと併用することが多く、サッカリンの甘味を穏やかにする。醸造品、飲料などの甘味付けの補助として使用されている。ヨーロッパでは、歴史的に古い甘味料は蜂蜜で、約1万年前すでに使用されていた。
人工的につくる天然甘味料としてはブドウ糖、果糖、異性化糖、乳糖がある。ブドウ糖はデンプンを分解して、果糖はショ糖を分解して、乳糖はチーズ製造の際に出るホエイから得る。異性化糖はブドウ糖に異性化酵素を作用させてつくる。ブドウ糖は菓子や飲料の材料に、果糖は甘味が砂糖より強いうえ清涼感があるので、飲料や日常の砂糖にかわる甘味料として用いられる。乳糖は薄甘い程度で、主として薬剤などの倍散用に使われる。
[河野友美・菅野道廣・山口米子]
人工甘味料
許可されているものにサッカリンナトリウムとアスパルテームなどがある。サッカリンのナトリウム塩であるサッカリンナトリウムの甘味は砂糖の200~700倍で、アイスクリーム類、菓子類、清涼飲料、漬物、佃煮、魚加工品、ジャムなどの食品に使用が許可されているが、添加量の制限がある。アスパルテームはアミノ酸のL-アスパラギン酸とL-フェニルアラニンを結合させてメチルエステルにしたものである。甘味度は砂糖の150倍。一般には体内ではもとのアミノ酸になるので害作用はないが、フェニルアラニンを分解できないフェニルケトン尿症の人のために含有する旨の表示が義務づけられている。熱に弱いので一般の調理には使用しにくいが、甘味が砂糖の味にきわめて近いので、清涼飲料などには十分に使用できる。消化吸収されない糖としては、ブドウ糖に水素を添加したソルビトールがある。ダイエット食品や肥満、糖尿病などの際の甘味料として使用されているが、下痢を生じやすい欠点がある。また、吸湿性があり、菓子や加工食品に柔らかさを与えるため砂糖と併用されることもある。また、新しい甘味料として注目を集めているキシリトールは、シラカバやカシの樹脂からとれる天然成分を原料とする糖アルコールで、おもにフィンランドで生産されている。甘さは砂糖と変わらないが、カロリーは25%も低い。日本では1997年(平成9)に食品添加物に指定され、ガム、キャンディーなどの菓子類、歯みがき剤、洗口剤や、糖尿病用の食事や術後の輸液などに使われている。
[河野友美・菅野道廣・山口米子]
『吉積智司他著『光琳テクノブックス4 甘味の系譜とその科学』(1986・光琳)』