乳房を支え、胸の形を美しく整えるための女性用下着。ブラ、アップリフト、バンドーなどともよばれる。二つのカップ部分を、背と肩とに回した紐(ひも)で着装する。普通、バンドー型とよばれるショート丈のもののほか、ウエストまでのロング丈のものもある。カップの形、肩紐やパッドの有無で、さまざまなタイプのものに分けられる。サイズは胸囲と、乳房の大きさにより決められる。材質は、木綿、絹、ポリエステルと、スパンデックスやゴム生地(きじ)など、伸縮性のある材質が組み合わされて使用される。
ブラジャーとはもともと、婦人の胸衣や子供用の袖(そで)付きボディス(胴衣)を意味するフランス語のブラシエールbrassièreで、これがのちに英語圏で乳房を支える下着の意味でブラジャーとして用語化された。フランスでは乳房を支える意味どおり、スーティアン・ゴルジュsoutien-gorgeという。
ブラジャーの起源は古く、古代ギリシア時代の婦人が用いたゾナzonaにその原型がみられる。これは活動しやすいように一枚の布を胸部に巻き付けるものだった。中世中期になって、胸高の芯(しん)入りコルセットが現れると、乳房を支える役割はコルセットが担うことになる。18世紀末期を除き、ほぼ20世紀初めまでこの着装法が持続された。18世紀末期は、自然らしさに美意識が求められた時代で、円柱形のギリシア風ドレスにはそれまでのコルセットが不要であった。そのため乳房を支え整える必要が生じ、ドレス自体の胸部に裏打ちをしたり、「偽の乳房」とよばれた一種のブラジャーが考案された。19世紀後期になると、豊かなバスト・ラインの流行で、バスト・インプルーバーbust-improver(一種の補正用パッド)が登場した。
今日のようなブラジャーは、20世紀初め以降コルセットが短くなり、しだいに腰部を覆うのみとなった1910年ごろから着用されるようになった。以後、外衣の流行に伴い、さまざまなタイプのブラジャーが登場している。
[深井晃子]
乳房を支え,胸の形を整えるために用いる女性用下着の一種。もともとの意味は負いひもをあらわす。ほかにアップリフトuplift,バンドーbandeau,ブラbraなどともいう。吸湿性,通気性のある木綿や,伸縮性のある化学繊維などの素材が用いられる。乳房をおさえたり形を強調したりする下着としては,古代ギリシア・ローマ時代のファスキアfasciaというひも状のものや,革の胴衣などがあった。中世にはのりなどで前面をかためて成形した胴衣があらわれ,18世紀には鯨のひげを細かくさしこんでつくった胸までもあるコルセットで,乳房をおさえ扁平に見せた。19世紀の中ごろにコルセットと分離し,針金などで乳房の形をつくったものに布をかぶせた乳房支持具が生まれ,その後さまざまな形のものがあらわれた。20世紀初めには肩ひものついた製品が売り出され,ブラジャーの名がつけられた。日本でブラジャーやコルセットが使われはじめたのは鹿鳴館時代であるが,使用したのは一部の女性のみであった。昭和初期に乳房バンドの広告が出されたが,当時の女性はむしろ乳房を目だたせないよう晒(さらし)やガーゼで胸を巻いていた。今日見られるようなブラジャーは1950年に初めて売り出された。
ブラジャーの種類にはバンドー型と呼ばれる短い丈のものと,ウエストまである長いものがある。またカップの形によって乳房全体を包むものやハーフ・カップなどに分けられる。その他,ワイヤの入ったもの,カップに縫い目のないもの,ひものないもの,前でとめるものなど形,機能,用途による種類は多い。またサイズはアンダーバストとトップバストの差によって表し,10cmはAカップ,13cmはBカップ,15cmはCカップなど,AA,AからEまであり,アンダーバストの寸法でB70というように表示される。
執筆者:池田 孝江
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…いずれも吸湿性,通風性,伸縮性,保温性に富む素材でつくられ,メリヤスなどニット製品が多い。ファウンデーションは女性用で,ブラジャー,ウエストニッパー,ボディスーツ,コルセット,ガードルなど胸やウエスト,腹部などをひきしめ,ヒップ・アップなど体型を整えるために用いられ,伸縮性と体に密着する性質をもつ素材でつくられる。ランジェリーも女性用でスリップ,キャミソール,ペティコートなどがあり,上に着る衣類のすべりをよくし,汚れや傷みを防ぐために用いる。…
※「ブラジャー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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