改訂新版 世界大百科事典 「ブンタン」の意味・わかりやすい解説
ブンタン (文旦)
pummelo
shaddock
Citrus grandis Osbeck
ミカン科の常緑果樹で最も大きな果実をつけるかんきつ類。ザボン,ボンタン,ウチムラサキ(内紫)などの異名がある。一般に樹勢強く大木になるが品種によりやや矮性(わいせい)。耐寒性は一般に弱い。通常,緑枝,子房などには細かい毛がある。葉も翼葉も大きい。花は大きくて総状花序の房咲きになる。白色だが,アントシアンanthocyan色素を含み,いくぶん青みをおびる。4弁花が多い。果実は大果で1kg前後のものが多いが,2~3kgになる品種もある。果皮色は黄白色から黄色。果皮厚く,普通1~2cmで,苦味のあるものが多い。瓤囊(じようのう)は厚く,その数は他種に比べ多く,15前後。肉質はグレープフルーツに比べ硬い。果肉の赤色系色素はリコピンlycopeneである。種子は白色,単胚。種子数は多いが,単為結果性があり,種子のない無核果も生じる。
マレー半島からインドネシアが原産地といわれる。中国南部には早い時代に伝播(でんぱ)し,日本には江戸時代に南方から果実で持ち込まれ,実生から独特の品種が生じたが,明治以降,さらに台湾,中国南部から優良品種が穂木で導入された。ザボンの名はポルトガル,スペイン語zamboaの転訛語で,zamboaはセイロン語のjamboleに由来するという。おもに東南アジア,中国南部,台湾,日本で栽培され,品種が分化発達した。自然雑種が多く,果形で球形~扁球形のものとセイヨウナシ形のものに,果肉で有色(赤~桃色)種と白肉種に,食味で1%前後の酸味のあるものと無酸(0.1%程度)のものに大別される。栽培品種にはタイのカオパン,カオファン,中国の沙田柚(しやてんゆ),台湾の麻豆(まとう)文旦,マレーシア原産の晩白柚(ばんぺいゆ)(熊本県で栽培),平戸(ひらど)文旦,江上(えがみ)文旦(長崎),土佐文旦(別名法元(ほうげん)文旦),水晶文旦(高知),本田文旦(別名阿久根(あくね)文旦(鹿児島))などがある。近縁種には安政柑(広島),大橘(おおたちばな),ジャガタラ柚(別名獅子柚(ししゆず)),谷川文旦,晩王柑(ばんおうかん)などがある。ほかにも近縁品種は多い。
ほとんど生食にされる。赤肉種はデザートの彩りに使える。日本では約9000t生産され,砂糖漬(文旦漬)にもされる。大果でりっぱなうえ特有の香りがあるため置物にもされる。
執筆者:山田 彬雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報