日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブンデスバンク」の意味・わかりやすい解説
ブンデスバンク
ぶんですばんく
Deutsche Bundesbank
ドイツ連邦共和国の中央銀行。正式にはドイツ・ブンデスバンクといい、ドイツ連邦銀行ともよばれる。本店はフランクフルト・アム・マインに置かれている。ブンデスバンクは、1957年8月1日に従来のドイツ・レンダーバンクDeutsche Länder Bankを改組して発足した。前身であるレンダーバンクは、第二次世界大戦後のドイツの東西分割の際、連邦制を採用した西ドイツの中央銀行として設立されたものであるが、各州に一つずつ法的に独立した形で設けられた州中央銀行の中央機関としての性格をもつものであった。つまり、二段階中央銀行制度がとられていたのであるが、この制度はきわめて地方分権の強いものであり、その機能的限界が経済復興や経済規模の拡大に伴って無理となったことから、中央集権的な性格をもつブンデスバンクが設立されることとなったのである。
ブンデスバンクは、銀行券発行の独占権をもつと同時に金融政策の最高責任者としての権限をあわせもち、ドイツの通貨の管理者としての機能を果たすものとされている。ブンデスバンクには、政策決定機構として中央銀行理事会が、執行機関として役員会および州中央銀行役員会が設けられている。中央銀行理事会は、公定歩合、公開市場操作、支払準備率および連邦・州の公金の同銀行への集中に関する政策を決定するとともに、その執行責任を負っている。役員会は全国的業務や中央銀行理事会決定事項の執行機関であり、州中央銀行役員会は州単位業務の執行機関である。ブンデスバンクは、他の先進諸国の中央銀行と比較して連邦政府に対して中立性が強いという特色をもっている。たとえば、政府は中央銀行理事会に出席し提案はできるが、議決権はなく、その決定を2週間(次の理事会まで)延ばすことができるにすぎない。
ブンデスバンクの政策は、伝統的に通貨価値の維持に重点を置き、旧西ドイツ経済の安定的成長に寄与してきた。1990年の東西ドイツ統一後も中央銀行の役割を担うことになったが、ヨーロッパ通貨統合のスタートに伴い、1998年6月、ヨーロッパ共通の単一通貨ユーロの通貨発行権をもち、ヨーロッパ全体の金融政策を決める唯一の中央銀行としてヨーロッパ中央銀行(ECB)が発足した。ECB発足以降、ユーロ圏の金融政策はECBおよびヨーロッパ連合(EU)全加盟国中央銀行からなるヨーロッパ中央銀行制度(ESCB)を通じて単一の金融政策として行われる。これにより、ブンデスバンクをはじめとする各国の中央銀行はECBの指導を受ける立場となった。ECBは、総裁を長とする役員会と、ユーロ圏の中央銀行総裁からなる政策理事会によって運営されているが、その組織形態は、ブンデスバンクをモデルにしており、通貨価値の安定を最重要政策として掲げている点も、ブンデスバンクを倣ったものといわれている。
[原 司郎・北井 修]