日本大百科全書(ニッポニカ) 「プリンストン高等研究所」の意味・わかりやすい解説
プリンストン高等研究所
ぷりんすとんこうとうけんきゅうじょ
Institute for Advanced Study
アメリカ、ニュー・ジャージー州プリンストンにある研究所。実業家バンバーガーLouis Bambergerらの寄付金500万ドルを基礎にして1930年に創設された研究所で、研究上の交流は行われているが、プリンストン大学とは別の組織である。史学、数学、自然科学などの部門をもっている。史学部門とは、文学、法律、経済をはじめとして実験設備の必要ない部門が対象になっている。1930年代、ヨーロッパでのナチスの台頭により、ユダヤ人が迫害され、アインシュタイン、J・L・フォン・ノイマンらをはじめ亡命せざるをえなかった科学者を積極的に迎え入れた。所員は100名前後で、研究環境のよい点で高く評価され、世界各国からそれぞれの分野の第一線の研究者が集まっているが、数年間の研究で帰国するという流動的な研究者も多い。日本からこの研究所に留学したのは物理学の湯川秀樹(ひでき)、朝永振一郎(ともながしんいちろう)、数学の角谷静夫(かくたにしずお)(1911―2004)、小平邦彦(くにひこ)である。第二次世界大戦後、水爆の研究開発に強く反対していたオッペンハイマーが研究所長を務めたこともある。今日ではコペンハーゲンにある北欧理論原子物理学研究所とともに、数理物理学の先端を担っている。
[雀部 晶]