改訂新版 世界大百科事典 「ヘイケボタル」の意味・わかりやすい解説
ヘイケボタル
Luciola luteralis
甲虫目ホタル科に属し,ゲンジボタルとともに日本の代表的なホタル。ゲンジ(源氏)に対し,小型で弱々しいところからヘイケ(平家)と名づけられた。形態的には大きさ(本種の体長8~10mm)のほか,胸部背面の縦紋が中央で横に広がらない,上翅の点刻がよりまばらで,縦の隆条が弱いなどで区別できる。日本全国,サハリン,朝鮮半島,中国などに分布する。成虫は6~8月に発生するが,例外的に9~10月に発生することがある。雌は交尾後,水田際や用水路際のコケに50~100卵を産む。卵は約1ヵ月後に孵化(ふか)し,幼虫は水中でヒメモノアラガイやタニシなどの巻貝を食べる。翌年の5月ころ終齢幼虫となり,腹部の発光器で光を放ちながら岸に上がり,土中へ潜って蛹化(ようか)する。潜土後,約30日で羽化する。幼虫もゲンジボタルに似るが,2齢以後は前胸節背面の黒色紋が十文字形となることで区別できる。
→ホタル
執筆者:林 長閑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報