ヘパリン(英語表記)heparin

翻訳|heparin

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ヘパリン
heparin

ムコ多糖類一種で,α-ヘパリンとβ-ヘパリンとがあるが,普通,ヘパリンというのはαのほうで,D-グルクロン酸D-グルコサミン残基が交互に結合し,前者の1級アルコール基と後者アミノ基のほとんど全部に硫酸基がエステル結合している。哺乳動物の組織や血液に広く分布し,抗凝血性や血漿清澄作用があるので,血液凝固や血栓防止に用いられる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディアの解説

ヘパリン

強い抗血液凝固作用をもつ酸性ムコ多糖類。等分子のグルコサミン,グルクロン酸からなり,硫酸基を含む。肥満細胞(結合組織にある遊離細胞の一種)で生産されると考えられ,肝臓およびに特に多いが,腎臓,脾臓,胸腺,血管など哺乳(ほにゅう)類の各組織にも広く分布する。抗血液凝固作用は強い亜硫酸イオンの負電荷によるとされているが,クジラから得られたω‐ヘパリンは硫黄含量がヘパリンより低いが高い抗血液凝固作用がある。
→関連項目人工血液

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

栄養・生化学辞典の解説

ヘパリン

 D-グルコサミン,D-グルクロン酸,L-イズロン酸を構成単位とする多糖のN-硫酸,N-アセチル,O-硫酸置換体.ムコ多糖に属する.血液凝固を阻止する作用がある.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典 第2版の解説

ヘパリン【heparin】

ムコ多糖の一種で,抗血液凝固作用をもつ。血管内皮に分布している肥満細胞の顆粒中に多量に存在している。ウロン酸とグルコサミンが交互に結合したものが基本構造となっている(図)。ウロン酸としてはD‐グルクロン酸とともにL‐イズロン酸も存在する。また,グルコサミンのアミノ基にも硫酸基が結合していることが多い。ヘパリンのムコ多糖鎖は,さらにキシロースを介してタンパク質と結合し,生体内ではプロテオグリカンとして存在する。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ヘパリン
へぱりん
heparin

強力な血液凝固阻止作用をもつ多糖類の一種。初めイヌの肝臓(ラテン語hepar)から分離されたのでheparinと命名された。小腸、肺に多く、皮膚、胸腺その他にも存在する。市販品は腸由来のものが多い。

 構造的にはヘパリンはグリコサミノグリカン(酸性ムコ多糖ともいう)とよばれる多糖類に属す。グリコサミノグリカンという名はグリコサミン(糖のヒドロキシ基-OHの一つがアミノ基-NH2と置換した化合物の総称。アミノ糖ともいう)を含んだ多糖類(グリカンglycanは多糖を表す)ということを表すが、化学構造はグリコサミンとウロン酸(糖のカルボニル基と反対の末端の炭素がカルボキシ基-COOHになった化合物の総称)の2糖の繰返し構造を骨格とする。ヘパリンではグリコサミンの部分がD-グルコサミン(D-グルコースのヒドロキシ基-OHの一つがアミノ基-NH2と置換した化合物)、ウロン酸の部分がD-グルクロン酸(D-グルコースのカルボニル基と反対の末端の炭素がカルボキシ基-COOHになった化合物)あるいはL-イズロン酸(アルドヘキソースの一種であるL-イドースのカルボニル基と反対の末端の炭素がカルボキシ基-COOHになった化合物)が骨格をなす。さらに大部分のグルコサミンのアミノ基と6位のヒドロキシ基、および一部のイズロン酸の2位のヒドロキシ基が硫酸化されており、もっとも硫酸化程度が高いグリコサミノグリカンである。分子量は6000~2万と不均一である。

 ヘパリンはマスト細胞(肥満細胞ともいう。ヘパリンやヒスタミンなどの分泌顆粒(かりゅう)を含み、血管周囲に多く存在する)中でプロテオヘパリン(ヘパリンの前駆体で分子量100万の巨大分子)として生合成され、エンド-β(ベータ)-グルクロニダーゼの作用で、分子量6000~2万となり、ヒスタミンなどと結合してマスト細胞の顆粒中に貯蔵される。ヘパリンはアンチトロンビンⅢ(血液凝固に関与するトロンビンなどの働きを阻害する糖タンパク質)の血液凝固阻害作用を促進する。臨床的には、播種(はしゅ)性血管内凝固症候群および血栓塞栓(そくせん)症の治療、血液体外循環時における還流血液の凝固防止などに用いられる。

[徳久幸子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典の解説

ヘパリン

〘名〙 (heparin) 血液凝固阻止作用をもつ多糖類の一種。肝臓や毛細血管周辺の肥満細胞で生成され、多く血管壁に存在する。〔薬の効用(1964)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

化学辞典 第2版の解説

ヘパリン
ヘパリン
heparin

L-イズロン酸2-硫酸が(α1→4)結合で2-デオキシ-2-スルファミド-D-グルコース 6-硫酸に結合した(a)とD-グルクロン酸が(β1→4)結合で同様に結合した(b)の2種類の二糖の繰返し構造が主成分になったムコ多糖.小腸や肺に多く,皮膚や胸腺,そのほかにも分布している.工業的には,ウシブタの肺や腸からアルカリ性飽和硫酸アンモニウム溶液で抽出し,エタノールでタンパク質との複合体を沈殿させ,除タンパク後金属塩として精製する.分子量1万~2万5千.+45~+53°.臨床的には抗血液凝固活性と脂血清澄活性が利用されている.前者は血液中のアンチトロンビンⅢによる各種の血液凝固因を阻害するもので,活性発現には,最低,図の五糖が必要とされている.後者は毛細血管内皮表面に存在するリポタンパク質リパーゼを,血流中に放出する活性である.[CAS 9005-49-6]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典内のヘパリンの言及

【ウロン酸】より

…天然にはこれら3種のウロン酸が存在し,多糖類の成分として分布している。たとえば,高等動物の各種の組織にはヒアルロン酸,コンドロイチン硫酸,ヘパリンなどの酸性多糖があって,組織の構築に関与しているが,グルクロン酸はこれらの多糖の重要な構成成分である。また,植物の細胞壁構成成分であるペクチンにはガラクツロン酸が,褐藻の粘質物であるアルギン酸には多量のマンヌロン酸が含まれる。…

【抗凝血薬】より

… 輸血や血沈その他の血液検査に際して血液の凝固を防ぐために加えるクエン酸ナトリウムは,血液凝固に不可欠な因子であるカルシウムイオンCa2+を除去することによって効果を発現する。また,手術後の血栓形成の予防,血栓性静脈炎,冠動脈血栓などのように一部の血管で血液の凝固が起こる病気を防ぐために使われるものとしては,ヘパリンやクマリン系,インダンジオン系の経口抗凝血薬などがある。 ヘパリンは哺乳類の肝臓や肺から抽出される平均分子量約1万5000の酸性ムコ多糖体で,血液中に存在するアンチトロンビンIIIと呼ばれる血清グロブリンを活性化して,それが血液凝固因子,とくにXaおよびトロンビン(IIa)と結合して不活性化するのを促進するが,服用では効かず,静脈内注射または筋肉内注射を行う。…

※「ヘパリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報