糖酸の一種。アルデヒド基を有する単糖類,すなわちアルドースの末端第一級アルコール性炭素が酸化されてカルボン酸になったヒドロキシアルデヒド酸の総称。広義には,ケト基をもつ単糖類,すなわちケトースの末端アルコールが酸化された場合(どちらの末端が酸化されるかに応じて2種類存在する)も含むが,一般には前者のアルドウロン酸をさす。母体となるアルドースの語幹を付して,グルクロン酸,ガラクツロン酸,マンヌロン酸などと呼ぶ。天然にはこれら3種のウロン酸が存在し,多糖類の成分として分布している。たとえば,高等動物の各種の組織にはヒアルロン酸,コンドロイチン硫酸,ヘパリンなどの酸性多糖があって,組織の構築に関与しているが,グルクロン酸はこれらの多糖の重要な構成成分である。また,植物の細胞壁構成成分であるペクチンにはガラクツロン酸が,褐藻の粘質物であるアルギン酸には多量のマンヌロン酸が含まれる。言い換えれば,通常の食生活によってウロン酸を含む多糖が摂取されるのである。グルクロン酸の活性化型,すなわち,ウリジン二リン酸(UDP)グルクロン酸は肝臓における解毒作用に関与している。活性化型グルクロン酸はまた,グルクロン酸含有多糖の生合成中間体でもあり,活性化型グルコース(UDP-グルコース)が酵素的に酸化されて生ずる。多くの哺乳類はグルクロン酸からアスコルビン酸(ビタミンC)を合成することができるが,ヒト,サル,モルモットにはこの酵素活性がなく,これらの動物はアスコルビン酸を食物中からビタミンとして摂取しなければならない。ウロン酸にナフトレゾルシンと塩酸を加えて加熱すると青紫色に呈色し,この色はエーテルやベンゼンなどの有機層に抽出される。
執筆者:小林 啓二+村松 喬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
glycuronic acid.一般には,アルドースの第一級アルコール基だけをカルボキシル基に酸化した,ポリヒドロキシアルデヒド酸(アルドウロン酸)のみをさすが,広義には,ケトースの同族体であるポリヒドロキシケト酸も含める.特定のウロン酸をよぶにはその母体となる糖の語幹を接頭語として,D-グルクロン酸,D-ガラクツロン酸,D-マンヌロン酸,L-グルロン酸,L-イズロン酸などという.天然には,この5種類の存在が知られ,多くは動物,植物の多糖,とくにペクチン,アルギン酸,ムコ多糖中にグリコシド結合して存在している.ウロニド結合が加水分解を受けにくいために,これら多糖から遊離のウロン酸を得ることは困難であり,一般には,糖酸のモノラクトンを還元するか,または糖のヘミアセタール性ヒドロキシ基を適当に保護したのち,酸化すると得られる.ウロン酸はアルドースと同様に還元性を示す.ナフトレゾルシンと塩酸とを加えて熱すると青紫色を示し,この色はエーテルやベンゼンで抽出できる.カルバゾール-硫酸反応によって紅色を示し,比色定量に利用される.ウロン酸は生化学的に重要であり,とくにグルクロン酸はアスコルビン酸生合成の中間物質であるほか,動物体内で分解されにくいある種の毒物と配糖体を形成して尿中に排出されるので,解毒作用に関与していると考えられている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
アルデヒド基とカルボキシ基(カルボキシル基)とをもつ糖の誘導体の総称で、天然にはグルクロン酸、マンヌロン酸、ガラクツロン酸、L-イズロン酸の4種が存在する。D-グルクロン酸はD-グルコースのウロン酸に相当するもので、コンドロイチン硫酸などのグリコサミノグリカン(ムコ多糖)およびアラビアゴム、麦わら、木材などの植物性構造多糖類の構成成分として広くみられるほか、動物の解毒作用に関係し、いろいろな化合物と抱合してグリコシド結合したグルクロニドとして尿中に排泄(はいせつ)される。また、D-マンヌロン酸はアルギン酸中に、D-ガラクツロン酸はペクチン中に、L-イズロン酸はヘパリンなどに、それぞれ存在する。
[村松 喬]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…酸性多糖の一種。ウロン酸とN‐アセチルガラクトサミンが結合した2糖の繰り返しを基本構造としたムコ多糖で,分子量約2万。ウロン酸の種類,硫酸基の結合位置によって,主として三つの種類のコンドロイチン硫酸が知られている。…
…この中でゲルを形成する成分はガラクトースとL‐アンヒドロガラクトースからなる多糖で,アガロースと名付けられている。また褐藻にはD‐マンヌロン酸とL‐グルロン酸と呼ばれる2種のウロン酸からなる酸性多糖のアルギン酸が存在する。アガロースやアルギン酸は食品添加物としても用いる。…
…五炭糖には,核酸の構成成分であるD‐リボースやD‐2‐デオキシリボースが含まれる。以上述べた単糖は官能基としてはアルデヒド基もしくはケトン基のみをもつが,このほかにカルボキシル基をももつ単糖があり,これはウロン酸と呼ばれる。またアミノ基をもつ糖がありアミノ糖と名付けられている。…
※「ウロン酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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