C6H10O7(194.14).略号GlcU.D-グルクロン酸はコンドロイチン硫酸,ヘパリン,ヒアルロン酸などのムコ多糖類や,アラビアゴム,麦ワラなどの多糖類の構成成分として広く動物,植物界に分布している.血液や尿中には,微量ながら遊離状で存在する.植物性ゴム質,粘液質,配糖体の加水分解のほか,D-グルカル酸-1,4-ラクトンの部分還元,1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-D-グルコピラノースの酸化など,種々の方法で得られる.β-アノマーは融点165 ℃.+11.7→+36.3°(水).pKa 3.18.水,エタノールに可溶.還元糖としての一般的性質を示す.塩酸中で加熱すると,二酸化炭素とフルフラールとに分解する.この反応は検出,定量に利用される.3,6-ラクトンC6H8O6(176.13)は融点176~178 ℃.+20°(水).LD50 10700 mg/kg(ラット,経口).解毒に関係があり,ショウノウ,クロラール,フェノールなど,体内で酸化されにくい毒物を動物に投与すると,それらは肝臓中でD-グルクロン酸の配糖体となり,尿中に排出される.[CAS 6556-12-3][CAS 63-29-6:3,6-ラクトン]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
低分子生体物質の一種。ヒアルロン酸(関節液中に含まれる)やコンドロイチン硫酸(軟骨などの結合組織に含まれる)などのムコ多糖の主要構成成分であり,代表的なウロン酸である。グルコースの6位の水酸基がカルボキシル基におきかわった構造をもつ。水,エチルアルコールに可溶の針状結晶で,水溶液は変旋光を示す。分子内にヒドロキシル基とカルボキシル基が共存するため,3,6のラクトン(グルクロノラクトン)をつくりやすい。植物ではアラビアゴムなどの構成糖,細菌の莢膜(きようまく)多糖成分として広く分布する。代謝的には,ウリジン二リン酸(UDP)グルコースの酸化によってウリジン二リン酸(UDP)グルクロン酸が生成し,これが種々の多糖のグルクロン酸残基供与体となる。UDP-グルクロン酸は肝臓の小胞体上の酵素の働きで,フェノール類の水酸基と反応してグルクロン酸抱合体を形成する。グルクロン酸抱合によってフェノール類は無毒化され,かつ尿中に排泄されやすくなる。すなわちUDP-グルクロン酸は解毒作用に関与している。グルクロン酸はアスコルビン酸(ビタミンC)生合成経路の入口に位置する。
執筆者:柳田 充弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ウロン酸の一種で、グルコースの6の位置が酸化されたもの。白色の粉末で、水やエタノールによく溶ける。高等動物のムコ多糖類の主要な構成要素で、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸などに含まれる。また、アラビアゴムなどの植物の粘質物や細菌の細胞壁などにD型として存在する。なお、グルクロン酸は、体内の老廃物であるフェノール性の有毒物質と結合して、これを抱合解毒する働きがある。しかし、このとき有効なのは遊離のグルクロン酸ではなく、ウリジン二リン酸(UDP)‐グルクロン酸であり、これは生体内で、UDP‐グルコースからつくられる。
[村松 喬]
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…広義には,ケト基をもつ単糖類,すなわちケトースの末端アルコールが酸化された場合(どちらの末端が酸化されるかに応じて2種類存在する)も含むが,一般には前者のアルドウロン酸をさす。母体となるアルドースの語幹を付して,グルクロン酸,ガラクツロン酸,マンヌロン酸などと呼ぶ。天然にはこれら3種のウロン酸が存在し,多糖類の成分として分布している。…
※「グルクロン酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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