花壇や鉢植えで夏から秋までの長い間,白,赤,紫などの美しい花を咲かせるナス科の多年草であるが,一般には秋まきまたは春まき一年草として栽培される。ツクバネアサガオの名もある。ツクバネアサガオ属Petuniaはブラジルやアルゼンチンに25種以上もあるが,それらのなかのP.violacea Lindl.とP.axillaris BSP.を親とした種間交配によって1830年代に育成されたものが,現在のペチュニアの園芸品種の基本となっている。改良種の系統は多いが,大別すると一重咲きでは大輪,中小輪があり,特殊系統のものに八重咲種,波状弁巨大輪種,匍匐(ほふく)性種などがある。葉は卵円形,茎葉,萼などに腺毛がある。花冠は漏斗形,5裂し,果実は蒴果(さくか)で,熟せば縦に裂けて微細な種子が多数こぼれる。ペチュニアの改良は世界各国ともに盛んであるが,とくに八重咲種ではまいた種子が全部八重咲きになるオールダブルが日本,アメリカ,カナダで発達し,遺伝学の応用で100%八重咲きに咲くものがつくられている。波状弁巨大輪種は花弁に網状の脈が著しくあらわれて,花径は10cmに及ぶ。花色の改良も注目に値し,花の周辺が白覆輪となるピコティ系,放射状に異色の彩りのある二色咲系などがあり,最近は黄色花も現れている。ペチュニアは比較的寒さに強いので,種を秋にまきフレームで越冬させ,春早く開花させる方法がとられているが,寒地では春まきとする。発芽温度は25℃,長日状態で花芽分化する。ツクバネアサガオ属はタバコ属に近縁で,属間雑種もあり,ウイルス病に侵されやすいので,被害植物は焼却するのがよい。繁殖は種子によるが,多数の固定品種にはF1(雑種第1代)種も多く,挿芽繁殖も行われる。
執筆者:浅山 英一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ナス科(APG分類:ナス科)の半耐寒性一年草または多年草。南アメリカ、メキシコ、北アメリカ南部に40種分布する。和名のツクバネアサガオ(衝羽根朝顔)は園芸交雑種P. × hybrida Vilm.-Andr.につけられたもの。現在の園芸品種はアルゼンチン産で白花のアクシッラリスP. axillaris B.S.P.と濃紫色花のビオラケアP. violacea Lindl.との種間雑種を育成したのに始まる。以来、多彩な品種が育成された。変異が大きく、草丈20センチメートルの矮性(わいせい)種から40センチメートルを超す高性(こうせい)種まである。花形はアサガオに似た漏斗(ろうと)形で、花弁の縁(へり)が平らな平弁と、波打つ波状弁とがあり、一重のほかに八重咲きもある。花径は3センチメートルの小輪から13センチメートルの巨大輪まで変化が大きい。花色は白、緋赤(ひせき)、青紫、淡黄などの単色と、赤・桃・紫に白が混じる絞り咲き、星模様の星咲き、白覆輪、淡色地に紫や紫紅色の網目模様の入るものなどがあり、多彩である。
[植村猶行 2021年7月16日]
種子はサクラの花の終わるころに播(ま)く。種子はごく小さいもので、厚播きにならないようにし、覆土はしない。双葉が完全に開いたら3~4センチメートル間隔で移植箱に移す。本葉が6、7枚になったら、花壇なら25~30センチメートル間隔に、鉢なら3、4号鉢に1株ずつ定植する。花壇は日当りと水はけのよい場所を選び、肥料は十分に与える。連作障害が出やすいので、毎年植え場所をかえる。また他のナス科植物との連作も避けたほうがよい。
[植村猶行 2021年7月16日]
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