ペルオキソ二硫酸(読み)ペルオキソニリュウサンエン

化学辞典 第2版 「ペルオキソ二硫酸」の解説

ペルオキソ二硫酸(塩)
ペルオキソニリュウサンエン
peroxodisulfuric acid(peroxodisulfate)

過硫酸(persulfuric acid),過二硫酸は誤称
酸:H2S2O8(191.14).氷冷したHSO3Clに計算量のH2O2を作用させるか,濃硫酸の電解酸化で得られる.無色,オゾン臭のある結晶.純粋なら,室温でもかなり安定である.吸湿性があり,65 ℃ で溶融・分解する.水,エタノール,エーテルに可溶.水溶液加水分解してH2O2とH2SO5,さらにH2SO4になる.[CAS 13445-49-3] 
塩:K,Na,NH4,などの塩が用途も多く量産されている.たとえば,K2S2O8(270.32)は白色の三斜晶系結晶,Na2S2O8(238.11)は無色の結晶,(NH4)2S2O8(228.20)は無色の単斜晶系結晶,これらの塩は各硫酸塩または硫酸水素塩の水溶液を電解酸化すると得られる.また,H2S2O8と,各金属の水酸化物または炭酸塩との反応でも得られる.正四面体型の2個のSO3が-O-O-で橋かけ結合した [O3S-O-O-SO3]2- を含む.たとえば,NH4塩では,S-O約1.44~1.62 Å(SO3内),S-O2約1.50 Å,O-O約1.46 Å.∠S-O-O約122°.室温で,乾燥空気中ではかなり安定である.湿気で分解が促進される.熱すると分解して O2 を発生する.水に易溶.水溶液中では加水分解される.さらに加熱すると,O2 を発生し,M2S2O7を経て,MHSO4になる.強い酸化剤で,有機物と混合すると発火することもある.KI→ I2,Mn2+→MnO4,Cr3+→CrO42-などの酸化作用をする.Ag共存で酸化作用が促進される.酸化剤,漂白剤,重合反応の促進剤や開始剤,写真のハイポの完全除去用,電気めっき染料の製造,プリント配線のエッチング用,油脂脱臭脱色イーストの洗浄,可溶性デンプンの製造などに用いられる.[CAS 7727-21-1:K塩][CAS 7775-25-1:Na塩][CAS 7727-54-03:NH4塩]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のペルオキソ二硫酸の言及

【ペルオキソ酸】より

…かつて過酸化酸,ペルオクソ酸などとも呼んだ。ペルオキソ一硫酸H2SO5,ペルオキソ二硫酸H2S2O8,ペルオキソ一リン酸H3PO5,ペルオキソ二リン酸H4P2O8,ペルオキソ硝酸HNO4,ペルオキソチタン酸H4TiO8,ペルオキソクロム酸H3CrO8などがこれに属する。 かつてH2SO5を過一硫酸,H2S2O8を過二硫酸,H3PO5を過リン酸など,過〇〇酸と呼んだことがあるが,これは誤称であって,過〇〇酸は,過塩素酸HClO4,過マンガン酸HMnO4など,周期表の第VII族元素の酸化数の高いオキソ酸のみに用いられるものである。…

【ペルオキソ硫酸】より

…ペルオキソ一硫酸とペルオキソ二硫酸が知られている。過硫酸と呼ぶのは誤称である。…

※「ペルオキソ二硫酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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