吉草酸(読み)キッソウサン

化学辞典 第2版 「吉草酸」の解説

吉草酸
キッソウサン
valeric acid

C5H10O2(102.13).次の4種類の異性体があり,イソおよび光学活性吉草酸は,オミナエシ科カノコソウの根茎などに含まれている.4種類の異性体とも,相当するニトリル加水分解あるいは臭化ブチルマグネシウムと二酸化炭素を反応させると得られる.【n-吉草酸(valerianic acid,pentanoic acid):CH3CH2CH2CH2COOH.不快臭のある液体融点-34.5 ℃,沸点186~187 ℃,97 ℃(2.9 kPa).0.9387.1.4086.30倍の水に可溶,エタノールエーテルに易溶.香料の合成原料.[CAS 109-52-4]【イソ吉草酸(isovaleric acid,3-methylbutanoic acid):(CH3)2CHCH2COOH.無色酸味のある液体.融点-37 ℃,沸点175~177 ℃.0.935.1.4043.24倍の水に可溶,エタノール,クロロホルム,エーテルに可溶.香料の原料.密栓して保存する.[CAS 503-74-2]【】光学活性吉草酸(2-メチル酪酸)(2-methylbutanoic acid):C2H5(CH3)CHCOOH.液体.沸点177 ℃.0.9419.1.4044.±14~19°(無溶媒)[CAS 116-53-0]【トリメチル酢酸(ピバル酸),(pivalic acid):(CH3)3CCOOH.針状結晶.融点35.5 ℃,沸点164 ℃,75~78 ℃(2.6 kPa).0.905.1.3931.Ka 9.76×106(25 ℃).エタノール,エーテルに易溶.[CAS 75-98-9]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「吉草酸」の意味・わかりやすい解説

吉草酸
きっそうさん
valeric acid

飽和鎖式カルボン酸の一つ。ペンタン酸ともいう。

 バレロニトリルの加水分解、またはn-アミルアルコール1-ペンタノール)の酸化により調製される。不快なにおいをもつ無色の液体で、エタノール(エチルアルコール)やエーテルにはよく溶けるが、水にはわずかしか溶けない。酸としての性質を示し、水酸化アルカリや炭酸アルカリの水溶液には塩を生成して溶ける。また、アルコールと反応してエステルを生成する。生薬(しょうやく)の吉草根(きっそうこん)に含まれているのは、主として異性体のイソ吉草酸(CH3)2CHCH2COOHである。

[廣田 穰]


吉草酸(データノート)
きっそうさんでーたのーと

吉草酸
  CH3(CH2)3COOH
 分子式 C5H10O2
 分子量 102.1
 融点  -34.5℃
 沸点  184℃
 比重  0.9459(測定温度20℃)
 屈折率 (n) 1.4100
 解離定数 K=2.29×10-5

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「吉草酸」の意味・わかりやすい解説

吉草酸
きっそうさん
valeric acid

バレリアン酸ともいう。不快臭をもつ有機酸。次の4種類の異性体がある。 n -吉草酸 CH3(CH2)3CO2H (沸点 186℃) ,イソ吉草酸 (CH3)2CHCH2CO2H (174℃) ,エチルメチル酢酸 (活性吉草酸) C2H5(CH3)CHCO2H (175℃) ,トリメチル酢酸 (ピバリン酸) (CH3)3CCO2H (163.7~163.8℃) 。イソ吉草酸が最も普通で,オミナエシ科のカノコソウの根に含まれている。吉草酸エチルエステルは強い果実様香気を放つので,人工果実エッセンスとして利用されるが,市販品は異性体の混合物。

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栄養・生化学辞典 「吉草酸」の解説

吉草酸

 C5H10O2 (mw102.13).CH3(CH2)3COOH.炭素数5の飽和脂肪酸で,4種の異性体がある.

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