ペルチエ効果(読み)ぺるちえこうか(英語表記)Peltier effect

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペルチエ効果」の意味・わかりやすい解説

ペルチエ効果
ぺるちえこうか
Peltier effect

異種導体金属または半導体)A、Bを接合して電流を流すとき、接合部において(ジュール熱のほかに)電流に比例する発熱または吸熱がおこる現象熱電効果一種で、1834年フランスペルチエにより発見された。電流の向きを逆にすると発熱・吸熱が逆になる可逆現象である(ジュール熱は電流の2乗に比例する発熱のみで不可逆現象である)。接合部での発熱量Q[J/s=W]、電流をI[A]とすれば、QIに比例し、
  Q=πABI
と表される。比例係数πABは[V]の単位をもちペルチエ係数とよばれる。AからBへ電流を流したとき吸熱の場合をπABの正にとる。πABは二つの物質A、Bに関係する物質定数で、温度に依存する。ペルチエ効果は、電流が運ぶ熱量が物質により異なることに起因し、A、Bの絶対熱電能εA、εB[V/K]と次式で関係づけられる。

  πABTB-εA)
Tは接合部の絶対温度(K)である。

 導体A、Bの両端のように接合し、中間に電池を挿入して回路に電流を流すと、一方の接合部で吸熱が、他方の接合部で発熱がおこる。もし、T1T2で、接合部1で吸熱がおこる向きに電流を流したとすれば、接合部2では発熱がおこる。これは、低温部から高温部へ熱を運んだことに相当し、接合部1を冷却することになる。この原理は電子冷蔵庫などに応用されている。また、電流の向きを逆にすれば接合部1を加熱できるので、電流の向きを自動調整することにより、恒温槽に応用することもできる。

[宮台朝直]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ペルチエ効果」の意味・わかりやすい解説

ペルチエ効果
ペルチエこうか
Peltier effect

熱電気現象の1つで,異種の金属あるいは半導体を接触させて電流を流すと,接触点で熱が発生したり吸収されたりする現象。電子冷暖房の名称で特殊目的の冷凍庫,恒温槽などに広く応用されている。2つの金属を A,B として A から B に向って電流 I を流すと単位時間に発生する熱量 Q は電流 I に比例し,QΠABI となる。 ΠAB をペルチエ係数という。 ΠAB が正なら発熱で,負なら吸熱である。この現象はジュール熱と異なり可逆的で,電流の向きを逆にすると,発熱は吸熱に,吸熱は発熱に変化し,ΠAB=-ΠBA となる。この効果とトムソン効果とを合せたものがゼーベック効果である。 1834年 J.C.A.ペルチエにより見出された。 (→熱起電力 )

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百科事典マイペディア 「ペルチエ効果」の意味・わかりやすい解説

ペルチエ効果【ペルチエこうか】

熱電気現象の一つ。2種の異なる導体の接合点を通して電流を通ずると,その部分抵抗にもとづくジュール熱以外の熱が吸収または放出される現象。単位時間に吸収または放出される熱量は電流の強さに比例し,電流の向きを逆にすると吸収と放出が入れかわる。フランスのペルチエJ.C.A.Peltier〔1785-1845〕が1834年発見。電子冷凍に利用される。→ゼーベック効果トムソン効果
→関連項目熱電気

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改訂新版 世界大百科事典 「ペルチエ効果」の意味・わかりやすい解説

ペルチエ効果 (ペルチエこうか)

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世界大百科事典(旧版)内のペルチエ効果の言及

【電子冷却】より

…種類の異なる二つの導体を直列につなぎ,直流電流を流したとき,導体のつなぎ目で,熱の発生または吸収が起こる現象をペルチエ効果といい,ペルチエ効果を利用した冷却を電子冷却という。導体として金属を用いると,熱伝導がよいため,熱の発生や吸収が起こっても,二つのつなぎ目の間の温度差は小さくなってしまう。…

【熱起電力】より

…熱起電力は,金属の種類と接合点の温度のみによるので,回路中に精密な電圧計を備えてこの熱起電力を測定することにより,接合点の温度や温度差を検出するためにも用いられる(熱電対)。 ゼーベック効果に関連する現象として,ペルチエ効果とトムソン効果がある。ペルチエ効果Peltier effectは,異種金属の接合点に電流を流すとき,その点に電気抵抗に基づくジュール熱以外の熱の生成あるいは吸収が起こる現象で,34年フランスのJ.C.A.ペルチエによって発見された。…

【ペルチエ】より

…学問を志すようになったのは妻の母の遺産を得てからで,医学に興味をもち,電気による神経興奮の現象の研究から電気の研究へと向かった。1834年,アンチモンとビスマスを接合した棒に電流を通すと,その接合部分で熱の発生や吸収が起こる(ペルチエ効果)ことを発見,熱と電気の相互転換の研究に重要な役割を果たした。【日野川 静枝】。…

※「ペルチエ効果」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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